| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-282 (Poster presentation)
近年、ドローン技術は急速に発展・普及しつつあり、森林現況の把握においても注目されているが、その精度評価や自然林での観測例は少ない。本研究では、地上観測データとドローン観測データの関連性から、自然林における森林構造や動態の把握におけるドローン観測の有用性を検討した。
調査地は、大雪山層雲峡に位置する標高約1000 mの原生林調査区2 haと二次林調査区1 haである。主要樹種はトドマツ・エゾマツ・アカエゾマツ・ダケカンバである。両調査区において、長期毎木調査で測定された、DBHが4.8 ㎝以上の個体を対象に、森林構造及び動態の把握を試みた。さらに、調査地の地上観測個体とドローン観測個体を対応させたうえで、地上観測データとドローン観測データを比較した。
地上観測から、森林構造や動態について、遷移の進行に対応する違いが両調査区間で見いだされた。また、ドローン観測から、個体密度・樹冠面積のサイズ分布・ギャップ面積の違いが両調査区間で検出された。地上観測に対してドローン観測で判読できた個体の割合は、原生林調査区・二次林調査区において、それぞれ、幹本数で42.8%・56.3%、胸高断面積で87.7%・90.7%、地上部バイオマスで91.1%・93.1%となった。また、森林把握に不可欠な指標であるDBHと樹高に関しても高い精度で推定・測定できた。一方で、新規加入率や死亡率が高かった下層木では、ドローン観測での幹本数等の判読割合が低かった。
以上のことから、ドローン観測は、森林更新に重要な下層木の変化は十分に把握できない弱点があるが、バイオマスなど林冠木の影響が支配的な指標は十分に把握できる点で有用であると結論した。ドローン観測は地上観測よりも短時間で行えるため、森林モニタリングにおいて、より広範囲で多時期な調査を可能にすると言える。今後、ドローン観測データが蓄積されることによって、地上観測データと組み合わせて、より詳細に森林構造や動態を把握できることが期待される。