| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-283  (Poster presentation)

冷温帯ブナ老齢林のブナ実生と環境要因の関係性 -100x30m内の実生全個体調査から-
Beech seedlings and its environmental factors in a cool temperature mature beech forest: from all individual survey in a 100 x 30 m area

*米田美桜(筑波大学), 蔡一涵(筑波大学), 谷岡庸介(筑波大学), 井田秀行(信州大学), 廣田充(筑波大学)
*Mio YONEDA(Tsukuba Univ.), Yihan CAI(Tsukuba Univ.), Yosuke TANIOKA(Tsukuba Univ.), Hideyuki IDA(Shinshu Univ.), Mitsuru HIROTA(Tsukuba Univ.)

ブナ(Fagus crenata)は、冷温帯極相林の代表種である。ブナの更新において最も重要なプロセスである実生の分布・生残について数多くの先行研究があり、このプロセスに影響を及ぼす多くの要因(親木、積雪、林冠層状況、ササ、齧歯類など)が報告されてきた。実際にはこれらの要因が複合的に作用しこのプロセスが進むと考えられる。その一方で、調査労力の問題から先行研究では限定的な調査が多く、実際のブナ実生の分布と生残メカニズムの解明には至っていない。そこで、本研究では多様な環境を含むブナ林において広域かつ網羅的に実生と環境要因の調査を実施し、ブナ実生の分布と生残メカニズムの解明を目的とした。
本研究は⻑野県カヤノ平のブナ老齢林の固定調査区内の一部 100m x 30mを対象として、5m x 5mのサブコドラートごとのブナ実生のサイズ・齢、ササの密度、ブナ実生およびササ直上の光合成有効放射量、土壌含水率を2020年と2021年の8月に実施した。光強度に関しては開放地点で同時に計測した光合成有効放射量を用いて相対光強度を求めた。2020年と2021年の実生のデータから、実生の生残率を求めた。2021年10月には、ブナの種子落下の量と位置を推定するために落下していた殻斗数を調査した。調査を行った3,100m2には、計1104個体のブナ実生が存在しており、そのうち3齢以上の実生が半数以上を占めることが明らかとなった。実生数および実生の生残率の空間的なばらつきは非常に大きく、25m2内の実生数は0-50個体、生残率は0-100%であった。また、落下していた殻斗数から推定した落下種子数は、実生と異なる分布を取ることも明らかとなった。環境要因も空間的なばらつきが大きく、ササ直上および実生直上の相対的光強度はそれぞれ0.9-72.7%、0.2-17.0%であった。土壌含水率は31.8-88.8%であった。今回の発表では、これら実生の分布・生残と環境要因に加えて、これらの関係についても報告する予定である。


日本生態学会