| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-284 (Poster presentation)
三宅島は2000年に雄山が大噴火し、裸地化した山腹の緑化が必要とされた。高濃度火山ガスと島嶼生態系保護の観点から新たな緑化資材の開発が課題であった。新開発された東京クレセントロール(商標登録名、以下ToCR)は、これまで土砂流出防止や植物の定着に一定の効果が示されたが、長期的効果の検証は不足している。そこで、本研究では土砂流出量調査と植生調査を実施し、ToCR設置の効果を設置2~3年後と6年後で比較検証することを目的とした。試験地は三宅島雄山の火山性荒廃地に位置し、対照区と緑化試験区からなる。緑化試験区には2015年に250個のToCRがリルに設置された。土砂流出量は2016年に緑化試験区と対照区のリル末端に各2個設置した土砂受け箱で測定し、土砂の乾燥重量を流域面積当たり、月当たりに換算した。植生調査として植被率と種構成、樹木密度の計測を行った。植被率と種構成の調査には対照区と緑化試験区の1 mコドラートを用いた。対照区に対する緑化試験区における土砂流出量の割合の平均は、2017年に対して2021年は1/5程度に減少し、ToCRの土砂流出抑制に対し高い効果が示された。2016年と2021年の植被率を比較すると、対照区と緑化試験区ともに2021年で大きく(U-test、p<0.05)、各年の対照区と緑化試験区の植被率を比較すると2021年のみ緑化試験区が対照区より大きかった(U-test、p<0.05)。植物種は全体で11種が確認され、ハチジョウススキが約90%を占めた。樹木密度は緑化試験区が580個体 /ha、対照区が300個体 /haであり、緑化試験区で密度が高く(χ²test、p<0.05)、緑化試験区では草本植物の増加とともに木本植物の定着も進んでいた。設置初期に限らず設置から6年が経過しToCRが満砂した後も長期的効果を発揮していた。