| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-285 (Poster presentation)
施工地周辺の天然生二次林との連続性を目的とする自然回復緑化においては、種組成や林分構造などの生態学的な指標を用いた定量的評価が必要とされる。しかし、一度の植栽で目標植生を実現するのは困難であることから、継続的な植生管理が必要である。そこで本研究では、自然回復緑化地と周辺二次林の植生動態を明らかにし、生態系復元を達成するために必要な管理方法について検討することを目的とし、兵庫県南東部における植栽後40年が経過した自然回復緑化地と、隣接する管理放棄された二次林について種組成と林分構造の変化を調査・解析した。
胸高直径分布から種構成の経年変化を解析した結果、緑化地では陽樹性の低木種が枯死したのちアラカシが更新し、亜高木・高木層においてヤマザクラが枯死して、ウバメガシが成長しており、耐陰性の高い常緑樹中心の種構成へと変化していた。一方、二次林では夏緑樹林構成種であるコナラが高木層で優占し続け、低木層では常緑樹が増加し照葉樹林への遷移が進んでいることが示唆された。
胸高断面積割合にもとづいた類似度指数から林分構造の経年変化を解析した結果、緑化地ではウバメガシの優占度が高くなり、コナラが優占する二次林の林分構造に近づいておらず、今後もその傾向が続くことが示唆された。
これらの結果から緑化地および二次林は、共に常緑樹が優占する種組成へと変化しているものの、構成種や林分構造が異なるため、生態系復元が実現できていないことが分かった。緑化地の林分構造を二次林に近づけるためには、両者の種組成を近づけるような植栽を行ったうえで、互いの植生変化の方向が収束するよう密度管理を行う必要がある。