| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-295  (Poster presentation)

冷温帯コナラ林における非切断細根呼吸の日変化パターン
The diurnal variation of intact fine root respiration in a Quercus serrata forest.

*今吉健斗, 塩手文也, 吉竹晋平(早稲田大学)
*Kento IMAYOSHI, Fumiya SHIOTE, Shinpei YOSHITAKE(Waseda Univ.)

根呼吸(RR)は土壌呼吸(SR)の要素の一つであり、生態系の炭素循環を明らかにする上で重要である。RRは日変化/季節変化する様々な環境要因に応答して変化するが、野外環境下におけるRRの変化パターンや変動要因についての理解は十分ではない。また、RRは植物体地上部の状態の変化に影響されることが知られているが、RRの測定では地上部とのつながりを考慮していないものが多い。そこで本研究では、野外におけるRRの日変化パターンを正確に測定するとともに、その変動のメカニズムを明らかにすることを目的として、野外において根を切断せずにRRの日変化を測定し、環境要因との関係を調べた。
調査は冷温帯のコナラ林で着葉期(AGS,7-10月)および非着葉期(NGS, 4月・11月)に行った。対象木の根系の一部を傷つけないように露出させ、細根をチャンバー内に導入し、通気法によりRRを測定した。測定は1回約25時間とし、各月に複数回測定した。また、地温および日射強度を連続測定し、RRとの関係を解析した。
NGSでは日中にRRのピークが見られ、夜間に減少した。またRRは地温依存性を持つことが確認できた。この結果は切断根を用いた先行研究の結果と一致しており、非着葉期であるために光合成産物の影響は小さく、地温の影響を強く表れたのではないかと考えられた。一方AGSでは、NGSとは逆にRRが夜間にピークとなるケースが多く観察され、地温依存性は見られなかった。AGSにおけるRRと日射強度との関係を調べたところ、RRは測定の7.5-12時間前の日射強度との間に正の相関を示した。これは、RRの呼吸基質である光合成産物が、光合成によって有機物が合成されてから転流で根系へと運ばれるまでに時間を要するためであると考えられる。以上により、野外環境下のRRの測定においても地上部とのつながりを考慮する必要があること、着葉期のRRの日変化には呼吸基質となる光合成産物の転流が大きく影響していることが示された。


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