| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-298  (Poster presentation)

サワグルミ林土壌の発芽生長抑制活性の探索-リター・細根・土壌抽出物の比較-
Inhibitory activity of germination in the soil of Pterocarya rhoifolia forest: Comparison among extracts of L-layer, A-layer and fine roots.

*齋藤萌絵, 吉村謙一(山形大学)
*Moe SAITO, Kenichi YOSHIMURA(Yamagata Univ.)

 アレロパシーは、植物から放出される化学物質が他の植物に対して何らかの作用を及ぼす現象のことを指し、その作用経路には、葉からの滲出、揮発性物質の放出、植物残渣の蓄積、根からの滲出がある。植物群落は草本群落から木本群落へと遷移することが知られているが、草本群落では優占種が放出するアレロパシー物質による発芽生長抑制作用が遷移を停滞・遅延させる可能性が示唆されており、遷移におけるアレロパシーの影響を明らかにする必要がある。一方で、草本でのアレロパシーの影響は報告されているが、木本における研究は少ない。これらを踏まえ、遷移初期に優占する木本種はなんらかの形で土壌へ発芽生長抑制物質を供給しているという仮説を立て、木本植物のアレロパシーとその作用経路を検証した。本研究では、遷移初期に優占するサワグルミを用いて研究を行った。前述したように、アレロパシーは葉や根、植物残渣などから物質が溶出することで起こる。そこで、サワグルミの生葉、枯葉、細根などの植物試料と、植物残渣を含むリター土壌、細根滲出物を含む根圏土壌、根圏外のバルク土壌などの土壌試料を採取した。各試料をヘキサンと水で抽出し、得られた抽出物で種子発芽生長試験を行った。レタス種子は一般に抑制物質への感受性が高く、多くの種子発芽生長試験に用いられ指標となることからレタス種子を用いた。試験後の種子の発芽数、茎長、根長を測り、コントロールと比較して発芽生長抑制を検討した。0.1%の抽出物濃度で行った試験の結果、生葉・枯葉のヘキサン抽出物において発芽、茎長・根長生長の抑制が確認され、特に根長生長が抑制された。生葉のヘキサン抽出物をGC-MS分析した結果Jugloneが含有されていることから、生葉の生長抑制効果はjugloneによる作用であると考えらえた。細根抽出物には発芽生長抑制は見られず、サワグルミでの主なアレロパシーは葉に含有される成分によるものだと考察された。


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