| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-299  (Poster presentation)

鳥海山西部の森林限界以上に発達する土壌の理化学性
Characteristics  of Alpine soil in the western part of Mt. Chokai

*小林耕野(筑波大学), 浅野眞希(筑波大学), 小林孝行(日本大学), 田村憲司(筑波大学)
*Koya KOBAYASHI(Tsukuba Univ.), Maki ASANO(Tsukuba Univ.), Takayuki KOBAYASHI(Nihon Uni.), Kenji TAMURA(Tsukuba Univ.)

 東北日本海側の山地では多量の積雪の影響で針葉樹林が分布せず、森林限界が世界の同緯度地域と比較して低標高に存在する特異な生態系が成立している。しかしながら、東北日本海側の山地の森林限界以上に発達する土壌の特性はほとんど明らかになっていない。そこで本研究では鳥海山の西部の森林限界以上に発達する土壌の特性・生成を明らかにする事を目的として研究を行った。
 調査地点は鳥海山の西部、標高約約1,600 m に設定した。斜面にライントランセクトを設定し、斜面上部のハイマツ (Pinus pumila ) ・ チシマザサ (Sasa kurilensis ) 群落:K1、中部のチシマザサ(Sasa kurilensis ) 群落:K2、下部のイネ科 (Poaceae )が主要な植生である雪田草原:K3 で土壌断面調査を行った。土壌断面の記載を行った後、各土壌層位で土壌試料を採取し、理化学分析に供した。また、各地点の表層5 cmの地温の推移を(2020/10/1-2021/9/25)測定した。
 雪解け時期はK1は5/15、K2は5/25、K3は6/7であった。すべての地点において土層の深さは40 - 50 cm 程度であり、厚いOa およびHa層が観察された。また、下層において鉄の斑紋が観察された。すべての地点で有機炭素量は非常に高かった (471.2 -58.9g kg-1)。また、K1 のAB 層ではAlo+1/2Feoが23.1 g kg-1 とBg1 層の55.2 g kg-1 の半分以下であり、Al・Fe が溶脱していると推察された。Alp/AloはK1のBg2層を除いて0.5を超え、非アロフェン質の特徴が見られた。粘土画分のX線回折図により、K1のO層およびA層では石英のピークが強く、また表層ほど雲母のピークが強いことから、土壌の発達には大陸風成塵の影響を受けていると推察された。微細形態の観察により比較的に分解が進んだ有機物が無機鉱物と混和して存在していることが明らかになった。鳥海山の森林限界以上の土壌では微地形による水分環境が有機質層の発達やFe・Alの溶脱に伴う土壌の層位分化に影響を与え、微地形に対応して多様な土壌が生成していた。


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