| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-307  (Poster presentation)

ブナ倒木の微生物群集構造と分解速度への分解年数の影響評価
Effect of fungal community and decay length on decomposition rate of beech downed logs

*佐藤大地(日本大学), 上村真由子(日本大学), 飯尾淳弘(静岡大学), 韓慶民(森林総合研究所)
*Daichi SATO(Nihon University), Mayuko JOMURA(Nihon University), Atsuhiro IIO(Shizuoka University), Qingmin HAN(FFPRI)

森林生態系の二酸化炭素の吸収源としての機能は、大気中の二酸化炭素濃度上昇を緩和するとして期待されている。しかし、森林では有機物分解を通じて二酸化炭素が放出されている。中でも、森林の炭素プールを構成する枯死木からの炭素放出は森林の炭素収支の評価には欠かせない。そこで本研究では、伐採年の明らかな枯死木を対象とし、分解年数によって変化する枯死木の環境要因や基質特性が枯死木の呼吸速度に与える影響を明らかにし、森林生態系の炭素収支の解明につなげることを目的とした。調査地は群馬県利根郡みなかみ町の日本大学水上演習林である。2008、2013、2018年に伐採や風倒によって生じた枯死木を対象とした。調査方法は、赤外線ガスアナライザーを用いた呼吸速度の測定と、サンプリングで得た木粉から抽出したDNAを用いて、定量PCR法による菌類と細菌類のコピー数を測定し、アンプリコンシーケンスにより菌類のOTU数を調べた。また、材密度、含水比、炭素・窒素濃度、リグニン・ホロセルロース・糖濃度を測定した。ブナの枯死木は、分解年数が進むにつれて材密度が低くなり、それに伴い、含水比は上昇し、呼吸速度は小さくなると予想された。しかし、分解が進み材密度が小さい場合に呼吸速度が大きくなった。化学性においては、分解が進むにつれてリグニン・糖・窒素濃度は高くなり、ホロセルロース濃度は低くなった。生物性においては、分解が進むにつれて菌類コピー数は減少したがOTU数は上昇した。細菌類コピー数は増加した。以上のことから、ブナの枯死木の分解は、環境要因や化学性、生物性が複雑に作用しながら、分解の初期段階で活発であり、分解が進むほど不活発になるが、分解がさらに進み、枯死木の材密度が非常に低くなった場合には分解が活性化される可能性も示唆された。


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