| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-308  (Poster presentation)

標高と積雪量の異なるブナ林における落葉と角材の分解呼吸速度の制御要因
Controlling factors of decomposition rate of leaf and wood litter at different elevations in beech forests

*中島海凪(日本大学), 上村真由子(日本大学), 飯尾淳弘(静岡大学), 韓慶民(森林総合研究所)
*Kaina NAKAJIMA(Nihon University), Mayuko JOMURA(Nihon University), Atsuhiro IIO(Shizuoka University), Qingmin HANG(FFPRI)

分解系は陸域生態系における炭素放出の約半分を占めており、地球規模での炭素収支を考える上で重要な過程である。にもかかわらず、温暖化によって有機物分解が促進されるかどうかには議論の余地がある。そこで本研究では、ブナの落葉と角材を入れたリターバッグを用いて場所や標高の異なるブナ林において分解実験を行い、有機物分解の制御要因を明らかにし、分解系への知見を深めることを目的とした。試験地は、脊梁山脈を挟んで位置する、群馬県利根郡みなかみ町の日本大学水上演習林と、新潟県南魚沼郡湯沢町の苗場国有林で行った。標高別の試験地は苗場国有林の550, 900, 1500m地点に設置した。リターバッグは5月に設置して11月に回収するまで(標高1500mのみ6月に設置して10月に回収)月に1度の頻度で呼吸速度、温度、含水比の測定を行った。11月に回収したサンプルは乾燥重量を測定し、重量減少速度を求めた。
呼吸速度や重量減少速度は、材よりも落葉で速かった。これは落葉が微生物によって分解しやすい基質特性を持っているためだと考えられた。落葉は材に比べて含水比の変動が大きかった。呼吸速度の温度と含水比への応答は材よりも落葉の方が明瞭であった。落葉と材ともに分解速度へ場所の違いは影響しなかった。落葉については標高が下がると分解速度が速くなったが、材については標高による影響も見られなかった。落葉のように分解しやすく環境要因の影響を受けやすい基質については標高による影響がみられたと考えられた。落葉と材どちらも、窒素濃度が高いと分解速度が速かったことから、窒素濃度の増加によって示唆される微生物バイオマスの増加が分解速度と対応したと考えられた。本研究の調査期間には積雪期を含んでいない。標高や場所により積雪量と積雪期間が異なることも落葉や材の分解速度に影響を与えると考えられるため、長期的な調査が必要である。


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