| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-310 (Poster presentation)
熱帯林は陸域最大の炭素吸収源である一方で、有機物分解によって大量の炭素を大気中に放出している。このことから、熱帯林における分解速度の変動要因を解明することが重要であると言える。
これまでリターは林床に落下し、土壌表層部で分解されると考えられてきた。しかし熱帯林に於いては樹種の多様化に伴う三次元構造の発達により、枝葉にトラップされて林床に落下しないリターが存在する。さらにヤシの根元にはリターが溜まり、倒木上に落下するリターも少なくない。これらの異なる場所に落下したリターは、地表とは異なる環境にさらされ、分解速度も異なっている可能性がある。一般に林床に落下したリターは、土壌動物の摂食による細片化を経て最終的に菌類および微生物によって分解される。しかしながら、これらの分解者群集もまた林内の場所ごとに異なっており、リターの分解過程を多様化させていると考えられる。
そこで本研究はマレーシアの熱帯林、ランビルヒルズ国立公園にてリターの存在場所による分解速度の違いおよび土壌動物の影響を評価した。
実験には2018年9月に同森林内で採取した新鮮なリターを使用し、リターバッグ法にて葉の残存率を算出した。リターバッグは土壌上・リター上・倒木上・ヤシの根本・土壌に非接触な枝葉の先(以下、空中とする)の5か所に設置した。各場所で網目の異なる2種類のリターバッグ(細目, 粗目)を用いて比較することで土壌動物の影響を評価した。バッグの回収は6, 12, 18か月後の3回とした。
回収の時期にかかわらず空中では有意に分解が遅かった。しかし18ヶ月後における空中は6ヶ月後時点の林床部と同等にまで分解が進んでいた。倒木上とヤシの根元は林床部と比べて分解が遅かったが、18ヶ月後では差が見られなかった。また、土壌動物の影響はヤシの根元では確認されなかったが、空中を含めその他全ての場所で確認された。