| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-311  (Poster presentation)

日本列島の森林における土壌微生物群集の特徴
Characteristics of soil microbial communities in Japanese forests

*織田峻綺(岡山大学), 菱拓雄(九州大学), 岸本圭子(新潟大学), 黒川紘子(森林総合研究所), 兵藤不二夫(岡山大学)
*Toshiki ORITA(Okayama Univ.), Takuo HISHI(Kyushu Univ.), Keiko KISHIMOTO(Niigata Univ.), Hiroko KUROKAWA(FFPRI), Fujio HYODO(Okayama Univ.)

陸上生態系のプロセスは地上部と地下部の生物群集間の相互作用によって駆動されており、この中で土壌微生物群集は有機物分解や窒素固定などの役割を担っている。土壌微生物群集は気候要因や土壌化学特性などの非生物的要因により規定されていることが知られているが、近年では植物の形質も土壌微生物群集の現存量や組成に影響を及ぼすことがわかってきた。一方、これまでの研究の多くは主に草原を対象としており、樹種組成の異なる森林の土壌微生物群集の特徴を景観レベルで調べた例は少ない。そこで本研究はモニタリングサイト1000の森林サイト16地点を対象に、土壌微生物群集の特徴をリン脂質脂肪酸分析によって評価し、土壌微生物群集に影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的とした。土壌微生物群集を規定する要因の解明のため、土壌微生物群集の現存量と組成(菌類・細菌現存量比、細菌多様性など) を応答変数、説明変数として気候要因、土壌pH、森林タイプ(落葉広葉樹林、常緑広葉樹林、常緑針葉樹林、針広混交林)、土壌化学特性、植物の形質を順に追加し、AICと尤度比検定の結果をもとにモデル選択を行った。気候要因は年平均気温、年間平均降水量、土壌化学特性は土壌炭素・窒素濃度、植物の形質はリター炭素・窒素濃度、LMA群集加重平均、樹木多様性を用いた。その結果、主に年平均気温、土壌pH、土壌炭素濃度や土壌炭素窒素比などの非生物的要因が土壌微生物現存量や菌類・細菌現存量比など多くの微生物群集組成を規定した。加えて植物の形質も土壌微生物群集に影響を及ぼしており、リター炭素窒素比は土壌微生物現存量や細菌多様性、リター炭素濃度はグラム陽性・陰性菌比の変動を説明した。以上より景観レベルにおいて、非生物的要因と植物の形質が森林の土壌微生物群集を規定する要因として重要であると考えられた。


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