| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-317  (Poster presentation)

ナラ類の腐朽倒木の大型節足動物群集
Macro arthropod communities associated with Fallen-decomposed woods of Japanese Quercus forest.

*仲村華人, 澤畠拓夫(近畿大・院・農)
*Kahito NAKAMURA, Takuo SAWAHATA(Kindai Univ.)

 木材腐朽菌によって分解された木材は腐朽材と呼ばれ、森林内に豊富に存在し、多様な生物の生息地となっている。腐朽材は、様々な生物に摂食、破砕されることで分解され、腐朽材が持つ栄養を森林に還元する。このような腐朽材の分解に関わる生物の中でも、昆虫を始めとする大型節足動物は、体サイズが大きく、木材穿孔性の種や腐植食者などの様々な機能的役割を持つ種を含むため、腐朽材の分解に大きく貢献すると期待される。木材分解における大型節足動物の機能について理解する上で、各腐朽段階の腐朽材に形成される大型節足動物群集に関する知見が不可欠となるが、研究が少ないのが現状である。そこで本研究では、奈良県奈良市のコナラ・クヌギ林内において、腐朽倒木から得られる大型節足動物群集を調査した。2019年7月から9月の間、5 m × 5 mのプロットを8つランダムに取り、プロット内に存在する直径5 cm以上のコナラ、クヌギの腐朽倒木を斧で破砕し、大型節足動物を目視で採集した。さらに、調査した各腐朽倒木の直径、長さ、腐朽型、含水率、材硬度、分解段階を計測し、記録した。計94本の腐朽倒木について調査した結果、71本が分解段階3に区分され、最も多く記録された。大型節足動物については、すべての分解段階において甲虫目が高い割合で得られたため、日本のナラ類の腐朽倒木には、甲虫目を主とした大型節足動物群集が構成されていることが明らかになった。また、分解後期の材を利用すると報告されているムカデ類などが分解段階等に関わらず得られる結果となり、ナラ類の腐朽倒木には従来の知見とは異なる群集が構成されている可能性が示唆された。


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