| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-318  (Poster presentation)

花虫綱を対象とした環境DNAメタバーコーディング系の野外調査への適用
Field application of environmental DNA metabarcoding assays for Anthozoa

*西澤崚平(神戸大学), 邬倩倩(神戸大学), 中野智之(京都大学), 駒井智幸(千葉県立中央博物館), 石田惣(大阪市立自然史博物館)
*Ryohei NISHIZAWA(Kobe Univ.), Qianqian WU(Kobe Univ.), Tomoyuki NAKANO(Kyoto Univ.), Tomoyuki KOMAI(Nat. His. Mus. & Inst., Chiba), So ISHIDA(Osaka Mus. Nat. Hist.)

花虫綱Anthozoaはイソギンチャク類や造礁サンゴ類を含む刺胞動物の分類群であり、約7,500種が記録されている。しかし海水温の上昇や海洋酸性化、沿岸開発などが多くの種の生息環境に大きな影響を及ぼしていることが知られてきた。また近年の系統解析により、多くの分類群で分類体系の見直しが行われている上、種同定が困難な分類群も多く存在する。そこで本研究では、環境DNAメタバーコーディング手法を利用し、花虫綱を対象とした4つのプライマーセットの開発および水槽水サンプルを用いた実験を行うとともに、同手法の野外適用を試みた。沖縄本島の勝連半島沖の3地点にて船上とサンゴ礁近くで採水したサンプル、および小笠原諸島父島の宮之浜と釣浜で採水されたサンプルに対して環境DNAメタバーコーディングを行い、花虫綱の調査を行った。勝連半島沖では採水場所付近に100mのラインを設定し水中動画を撮影し、採水場所付近の花虫綱相の調査も同時に行った。勝連半島沖サンプルより5目16科、父島サンプルより5目27科の花虫綱のDNAが検出された。また、勝連半島沖サンプルより検出された分類群には映像で観察された種が含まれていた。ただし、映像で観察された一部の種のDNAは非検出であり、環境中のDNA濃度は対象生物の形態や生息場所により異なると考えられる。また、参照配列情報が不足している種も多く、配列データベースの拡充が必要である。本研究では、環境DNAメタバーコーディング手法が採集・目視調査を行うことの難しい場所での花虫綱相のモニタリング手法となる可能性を示した。


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