| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-320  (Poster presentation)

シオカラトンボの成長に及ぼす殺虫剤暴露の影響
Effects of insecticide exposure on the growth of the white-tailed skimmer, Orthetrum albistylum speciosum

*小川晶史(新潟大学・院・自然), 鎌田泰斗(新潟大学・農), 篠田隼(新潟大学・農), 関島恒夫(新潟大学・農)
*Akifumi OGAWA(Grad. Sch. Sci. Niigata Univ.), Taito KAMATA(Niigata Univ. Agri.), Shun SHINODA(Niigata Univ. Agri.), Tsuneo SEKIJIMA(Niigata Univ. Agri.)

 近年、アキアカネをはじめとしたトンボ類の個体数減少が指摘されており、ネオニコチノイド系などの水稲用殺虫剤の施用はその主因として考えられている。これまで、野外水田における殺虫剤暴露試験では、アキアカネやシオカラトンボといったトンボ類の幼虫個体数や羽化個体数の減少が報告されてきた。殺虫剤影響の実態を子細に捉えるには、幼虫個体数の減少が成育段階のどこで起きているかを明らかにする必要があるが、幼虫期間における個体数を成育段階ごとに評価している研究は少ない。また、実際の環境において生物が受ける殺虫剤影響の要因には、殺虫剤成分を取り込むことによる直接効果の他に、餌生物の個体数減少に伴う間接効果が存在する。対象種以外の餌生物についても網羅的に個体数調査を行い、影響要因の解明をすることが、殺虫剤影響の更なる理解のためには重要である。
 われわれは、水田メソコスム(水田環境を模した野外実験系)を用いて、近年使用量が増加している殺虫剤ネオニコチノイド系クロチアニジンおよびジアミド系クロラントラニリプロールの連続施用が、水田生物に与える様々な影響を3年間にわたりモニタリングしてきた。本発表では、その中でも幼虫個体数および羽化個体数が継続的に一定数以上確認されたシオカラトンボに焦点をあて、孵化から羽化までの各成育段階における殺虫剤影響を明らかにした。その結果、幼虫期間の影響として、クロチアニジン処理区において終齢サイズに相応する大型幼虫特異的な個体数の減少が認められた。また、羽化段階では、両殺虫剤の処理による羽化率の有意な低下が確認できた。加えて本発表では、幼虫期間にみられた終齢サイズ相応の大型幼虫特異的な個体数減少の要因解析を行い、終齢幼虫の矮小化および餌生物の減少に伴う成長遅延発生の可能性についても考察する。


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