| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-321  (Poster presentation)

環境フィルタリングと生物間相互作用が植物の共起に与える影響:神奈川での解析例
Effects of environmental filtering and biotic interactions on co-occurrence of plants: a case study in Kanagawa

*川崎七海(神奈川大・院・理, お茶の水大・IHLI), 中臺亮介(国立環境研究所), 大西亘(神奈川県博), 西田佐知子(名古屋大・博), 山本薫(横須賀市博), 岩元明敏(神奈川大・院・理), 加藤美砂子(お茶の水大・理, お茶の水大・IHLI), 岩崎貴也(お茶の水大・理)
*Nanami KAWASAKI(Grad. of Sci., Kanagawa Univ., IHLI, Ochanomizu Univ.), Ryosuke NAKADAI(NIES), Wataru ONISHI(Kanagawa Pref. Museum), Sachiko NISHIDA(Nagoya Univ. Museum), Kaoru YAMAMOTO(Yokosuka City Museum), Akitoshi IWAMOTO(Grad. of Sci., Kanagawa Univ.), Misako KATO(Fac. of Sci., Ochanomizu Univ., IHLI, Ochanomizu Univ.), Takaya IWASAKI(Fac. of Sci., Ochanomizu Univ.)

 植物分布は、分布変遷などの歴史に加えて、気候や土地利用と言った環境ニッチ、資源競争や繫殖干渉といった生物間相互作用などの影響を複合的に受けており、その結果として、ある場所に複数の植物種が一緒にいる(共起)いない(非共起)というパターンが形成されている。しかし、ある地域の分布パターンについて統一的に解析した研究は少なく、地理的スケールとの関係や各要因の重要性についてはまだほとんど分かっていない。そこで本研究では、市民調査によって多くの分布情報が蓄積されている神奈川県の全維管束植物を対象とし、県内全域の1 kmグリッドでの植物種ペアの共起パターンと、環境ニッチや生物間相互作用を反映すると思われる6要因との関係を調べた。具体的には、各種ペアでの気候ニッチ非類似度と土地利用の違い(人工地面積差と農用地面積差)を環境ニッチ、開花期の重複割合、系統的距離、在来種・外来種の関係を生物間相互作用に関係するパラメータとして扱った。
 解析の結果、ほとんどの植物グループで環境ニッチ、特に土地利用の違いが共起パターンに大きく影響しており、環境ニッチフィルタリングによって共起パターンが形成されていることが示された。土地利用の違いは人為的攪乱の大きさに関係すると考えられることから、攪乱の強さに対する各種の要求度の差が共起パターンの形成に重要であると思われる。一方、生物間相互作用を反映すると思われる要因の効果は限定的であり、一部の科では開花期が重なっている種ペアほど共起、系統的距離が小さいほど共起に偏るという資源競争や繁殖干渉の観点からは逆が予想される効果も検出された。この理由としては、1 kmグリッドという地理的スケールが生物間相互作用の働くスケールとして広過ぎる可能性や、変数間で相関があることで効果がマスクされている可能性なども考えられるため、今後は地理的スケールや場所を変えての検証が必要であると思われる。


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