| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-323 (Poster presentation)
道路と草原の境界、岩石と草原の境界などの「境界部」は特殊な環境である。個体の葉の片方が岩上、他方が植生側にあるような「境界」に生育する植物に包括的に着目した研究例は少なく、境界の空間的構造が多様性に与える影響は不明である。本研究は「境界」に特徴的に出現する種の検出を試みた。調査方法としては、植生境界に直行する1mのラインを引き、中心(50cm)を境界にあわせた。ライン上を10cmおきに区切り、出現した植物種を記録した。境界から植生内10cmまでを「境界」とし、それより奥を「植生内」とした。解析では目的変数を10cmごとの植物種の出現の有無、説明変数を「境界」であるか「植生内」であるか、としてロジスティック回帰分析を行い、種の出現確率への境界の影響を調べた。なお、舗装や岩上などに希に出現する植物は解析に用いなかった。出現した植物種をもとに、クラスター分析により、矮小二次草地(二次草地と舗装の境界)、高茎二次草地(二次草地と舗装の境界)、砂浜海岸草地(ハマゴウ低木林と砂浜の境界)、風衝海岸草地(一次草地と岩場の境界)、岩上海岸草地(一次草地と岩場の境界)に分け、植生タイプごとに解析を行った。生物季節(田中・小池、2011)ごとに調査を行ったが、今回は生物学的夏(6月下旬~8月上旬)の結果を報告する。海岸岩場草地ではテリハノイバラが境界に、イソギクが植生内に多かった。海岸風衝草地ではヘクソカズラが境界に多かった。海岸砂浜草地ではナガバギシギシが境界に、ヘクソカズラが植生内に多かった。矮小二次草地ではメヒシバ、ヘクソカズラ、キツネノマゴ、コニシキソウが境界に、アズマネザサ、ドクダミは植生内に多かった。高茎二次草地ではミズヒキ、アキメヒシバが境界に、アズマネザサ、ヒメクグ、ヒルガオ、アキノタムラソウが植生内に多かった。今後は生態特性との関係を解析する予定である。