| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-328  (Poster presentation)

スラウェシ島の古代湖におけるメダカ属魚類の集団遺伝構造
Population genetic structures of medaka fishes in ancient lakes of Sulawesi Island

*袰岩美月, 山平寿智(琉球大学)
*Mizuki HOROIWA, Kazunori YAMAHIRA(Ryukyu Univ.)

近年、系外からのアドミクスチャーが種分化や適応進化を促進し、多様性の創出に貢献することが明らかとなりつつある。インドネシアのスラウェシ島には20種以上の固有のメダカ科魚類が分布しており、本科魚類の多様性のホットスポットとして知られている。特に、島の中央部に位置するマリリ湖群には4種6集団の固有種が生息しており、本島の中でも最も多様性の高い場所の一つに挙げられる。マリリ湖群は5つの古代湖から成る古代湖群で、各湖にはそれぞれに固有の1種/1集団が生息するが、湖群最大のトゥティ湖には同所的に生息する2種の固有種が知られている。本湖群は互いに河川で連結しており、トゥティ湖には上流の3つの湖から河川が流入することから、系外からのアドミクスチャーがトゥティ湖の2種の種分化に貢献した可能性が考えられる。しかし、トゥティ湖内の集団遺伝構造の詳細や、隣接する湖の他種/他集団からのアドミクスチャーの実態については明らかになっていない。トゥティ湖からランダムに採集された35個体を全ゲノムシーケンスにかけ、得られた一塩基多型(SNPs)の情報を用いて集団遺伝構造の解析を行った結果、トゥティ湖には既知の2種とは別に生殖的に隔離された第三の種が存在すること、そしてこの第三の種は隣接するラントア湖の種と系統的に近縁であることが明らかとなった。さらに、全ゲノム情報を用いた系統ネットワーク解析、ならびにf4統計量によるアドミクスチャーの統計的検定の結果、トゥティ湖の既知の2種は、第三の同所的種とラントア湖の種との共通祖先からの強い遺伝子浸透を経験していることも明らかとなった。講演では、このラントア系統とのアドミクスチャーが、トゥティ湖内の2種の種分化に貢献した可能性について考察する。


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