| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-331  (Poster presentation)

DNAバーコード解析により同種内での大きな遺伝的分岐が見つかったミャンマーの鳥類
Several bird species in Myanmar were found to have large genetic divergence by DNA barcoding.

*楢橋真理環(九州大学), Win Win Nwe(FRI, Myanmar), 西海功(国立科学博物館)
*Maria NARAHASHI(Kyushu Univ.), Win Win Nwe(FRI, Myanmar), Isao NISHIUMI(NMNS)

ミャンマー周辺地域は、陸鳥類の種多様性がアジアで最も高いと報告されている(Ding et al. 2006)。この地域は、インド、東南アジア、ヒマラヤ・チベットの3つの地理的地域に隣接している。したがって、現在の鳥類の種多様性がどのように形成されてきたかを理解する上で重要な地域である。しかし生物多様性情報の空白地帯であり、そのため生物多様性情報の収集から始める必要がある。現在、ミャンマーの鳥類のDNAバーコード登録は、126種237個体にとどまっており、これは、ミャンマーに分布する種が1,139種いることを考慮すると、その約10%にすぎない。そこで、本研究では国立科学博物館とミャンマー森林研究所が共同で実施したインベントリ調査で捕獲されたサンプルのミトコンドリアDNAのCOIバーコード領域の塩基配列の決定し、DNAバーコードのデータベースであるBarcode of Life Data Systemsに登録する。サンプルは2018年から2020年にかけて4回の調査で捕獲されDNAが採取されたもので合計52種144個体分である。そのうち4種はBOLD Systemsに新規登録の予定である。
系統解析の結果、同一種内で比較的古い分岐(2%以上=100万年以上前)のある複数のハプロタイプを持つ種が19種あった。また逆に、姉妹種と遺伝的差異が1%未満の種が2種みつかった。この結果を日本のDNAバーコード結果 (Saitoh et al. 2015) と比較すると、隠蔽種候補となる種内分化している種がミャンマーには多いことが示唆された。隠蔽種は、従来フィリピンや日本などの島嶼部に多く生息していることが知られている。しかし、今回の研究により、ミャンマーは大陸の国であるにもかかわらず、多くの隠蔽種候補が存在することが明らかになった。また、同一種内で比較的古い分岐のある複数のハプロタイプを持つ種の中には、同所的に分布する種が3種みつかっており、これは過去の交雑を反映していると思われる。


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