| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-335  (Poster presentation)

多種サイト占有モデルを用いた環境DNA分析における調査デザインの最適化
Optimization of survey design for environmental DNA analysis using a multispecies site occupancy model

*松本岳大(神戸大・院・発達), 深谷肇一(国立環境研究所), 坂田雅之(神戸大・院・発達), 沖津二朗(応用地質(株)), 稲川崇史(応用地質(株)), 平岡康介(応用地質(株)), 一柳英隆(水源地環境センター), 源利文(神戸大・院・発達)
*Takehiro MATSUMOTO(Grad Sc Human Dev Env Kobe U), Keiichi FUKAYA(NIES), Masayuki SAKATA(Grad Sc Human Dev Env Kobe U), Jiro OKITSU(OYO Corporation), Takashi INAGAWA(OYO Corporation), Kosuke HIRAOKA(OYO Corporation), Hidetaka ICHIYANAGI(WEC), Toshifumi MINAMOTO(Grad Sc Human Dev Env Kobe U)

ダムの存在が一要因となり淡水魚の多様性が低下している。そこで、効果的な淡水魚のモニタリングを行うことで、保全管理のための情報を取集する必要性がある。近年、魚類モニタリング手法として、サンプル水中に含まれる魚類の環境DNAを一度にまとめて検出することが可能な環境DNAメタバーコーディングが注目され、その実用化が期待される。実用化に際しては限られた予算のもとでより効率的に多種を検出できる調査デザインが求められるが、本手法の調査デザインに関しては未だ検討の余地がある。本研究では、ダム湖において効果的な魚類モニタリングを行うための環境DNAメタバーコーディングの調査デザインを検討した。調査は計5つのダム湖において春と秋に実施した。各調査では30サンプルを採取し、全サンプルに対してMiFish-U primersを用いた魚類環境DNAメタバーコーディング(MiFish法)を適用した。本研究では偽陰性を考慮した上で、ある一定の予算下における調査デザインの推定が可能な多種サイト占有モデルを用いた。各調査地においてMiFish法と河川水辺の国勢調査(ダム湖版)による採捕調査の結果を比較したところ、前者が後者で確認された種を概ね網羅していた。一方で、採捕調査のみで確認された種も存在し、MiFish法には未だ改善の余地があることが示唆された。実用化に際してはMiFish法を主軸に据え、補助的に採捕調査を行う調査体制が推奨される。一定予算下における調査デザインの検討では、地点数、反復数、リード数のうち、調査あたりの予算を地点数確保に割り振ることで種の検出効率が向上した。また、全調査地において春調査がより効果的な種の検出に繋がることが示唆されたが、5ダム湖中2ダム湖では秋の種組成が春の種組成を包含していなかった。そこで、環境DNAメタバーコーディングによる魚類相調査を実用化する際にはコスト配分を不均一とした両時期での調査を行うことが推奨される。


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