| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-336  (Poster presentation)

核DNAをマーカーとする魚類環境DNAメタバーコーディング法の野外適用
Field application of a new eDNA metabarcoding assay using nuclear DNA as a marker

*佐々木大介(神戸大学), 伊藤玄(龍谷大学), 山中裕樹(龍谷大学), 坂田雅之(神戸大学), 源利文(神戸大学)
*Daisuke SASAKI(Kobe Univ.), Gen ITO(Ryukoku Univ.), Hiroki YAMANAKA(Ryukoku Univ.), Masayuki K SAKATA(Kobe Univ.), Toshifumi MINAMOTO(Kobe Univ.)

近年、新たな生態系のモニタリングツールとして環境DNA分析手法が注目されている。特に、超並列シークエンス(HTS)を用いて生物群を網羅的に検出する環境DNAメタバーコーディング手法は、広い分類群を同時に調査できるモニタリングツールとして、魚類を中心に利用が拡大している。しかし、現在使われている手法には、種間の変異が十分でないために属レベルでしか検出できない近縁種が存在する、プライマーとのミスマッチによって検出されにくい分類群があるといった課題も残っている。そこで本研究では、これらの課題を解決するための新たな領域をターゲットとする手法の開発のため、核DNAのリボソームRNA遺伝子領域に注目した。これまでに、この領域をターゲットとする魚類環境DNAメタバーコーディング手法は確立されていない。本研究では、核DNAのリボソームRNA遺伝子領域上のITS2領域を増幅するプライマーを設計し、琵琶湖で採水したサンプルから魚類のDNAを検出し、この領域が環境DNAメタバーコーディング手法のターゲットとして十分に利用可能であることを示した。具体的には、設計したプライマーによって、琵琶湖とその内湖で採水した71サンプルから合計で17種(一部は属レベルでの検出)の魚類を検出した。本研究の検出結果を、ミトコンドリアDNAの12S領域をターゲットとするMiFishプライマー(Miya et al. 2015)による検出結果と比較したところ、一部の魚種では本研究で設計したプライマーの有効性が示された。一方で、MiFishプライマーでは検出されるが、設計したプライマーでは非検出となる種も見られ、データベースの不足や、プライマーとのミスマッチによる増幅バイアスなどの課題も見つかった。本研究によって、核DNAをターゲットとする環境DNAメタバーコーディング手法に関する新たな知見が得られ、環境DNA分析手法の今後の発展につながることが期待される。


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