| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-337 (Poster presentation)
石川県金沢市には、江戸時代やそれ以前に農業用水路や生活用水路として整備された歴史的用水路が残っている。これら用水は、金沢市の歴史的景観を生み出すだけでなく、川と都市や水田をつなぐ「人工的な水系ネットワーク」であり、長い歴史の中で独特の生態系(魚類相)が成立している可能性がある。しかし、近年では都市化に伴い用水の分断や埋め立て、暗渠化、コンクリート護岸化が進んでいる。そこで、本研究では歴史的用水網が残る金沢市を対象に、街中の用水網における魚類相を明らかにする目的で環境DNAを用いた用水の魚類相の調査を行った。採水は金沢市中心市街地を流れる、河川である犀川、浅野川および歴史的用水路である辰巳用水、鞍月用水、大野庄用水、近江町排水路、高岡町排水路などで行い、MiFishプライマーを用いたメタバーコーディング法により、魚種判別を行った。その結果、郊外だけでなく、金沢市中心部の主要観光地や繁華街を流れる用水にも、オイカワなどの一般的な河川性魚類が多くみられることが分かった。また、多くのアユが用水内を泳ぐ様子も確認できた。なお古くからこれらの地域に住んでいる方々に話を聞いたところ、かつては用水を泳ぐアユやゴリ(カジカ科やウキゴリ類の地方名)を採捕して、食していたという情報も得られた。これらのことは、用水が都市の生物多様性を高め、さらに都市住民にとっての生態系サービスにも寄与していることが示唆された。