| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-338  (Poster presentation)

環境DNA分析を用いた薬剤耐性菌の保菌動物の探索
Search for reservoir animals of antimicrobial resistant bacteria using environmental DNA analysis

*橋本渚(神戸大学), 坂田雅之(神戸大学), 杉山美千代(岐阜大学), 浅井鉄夫(岐阜大学), 源利文(神戸大学)
*Nagisa HASHIMOTO(Kobe Univ.), Masayuki K. SAKATA(Kobe Univ.), Michiyo SUGIYAMA(Gifu Univ.), Tetsuo ASAI(Gifu Univ.), Toshifumi MINAMOTO(Kobe Univ.)

近年、抗菌薬の開発やその使用頻度の増加に伴い薬剤耐性菌が蔓延し、院内感染などが問題となっている。薬剤耐性菌は抗菌薬が多量に使用される環境から分離されるだけではなく、野外環境への拡散が深刻化し野生動物からも検出されているが、野外における薬剤耐性菌の実態はあまり明らかになっていない。そこで本研究では、その実態を把握するための新たな手法を確立させることを目的とし、環境DNA分析で薬剤耐性菌の保菌動物を推定した。滋賀県琵琶湖で季節ごとに調査を実施し、湖を一周する形で設定した21地点で表層水と土壌のサンプリングを行った。哺乳類および鳥類の環境DNAメタバーコーディングによって生息種を、また採水サンプルから抗菌薬(セフォタキシム 1mg/L)含有DHL培地を用いて分離した細菌と環境DNAから薬剤耐性遺伝子を検出し、両者の在/不在データを共起分析で比較した。環境DNAメタバーコーディング分析の結果、哺乳類は計16種、鳥類は計26種検出された。また、肺炎桿菌など5種の細菌からTEM型など7種類の薬剤耐性遺伝子が検出され、環境DNAからCTX-M-1グループが計11地点で、CTX-M-2グループが計5地点で、CTX-M-9グループが計16地点で検出された。共起分析の結果、肺炎桿菌のTEM型およびSHV型とマガモ属の間に、肺炎桿菌のCTX-M-9グループとセキレイ属の間にそれぞれ正の共起がみられた。また、環境DNAから検出されたCTX-M-1グループとマガモ属、バンの間に、CTX-M-9グループとヒドリガモ属、キンクロハジロ、オオバンの間にそれぞれ正の共起がみられた。カモ科の鳥類数種との間に相関がみられたが、カモ科の多くは越冬のために高緯度地方から南下するため、国外から薬剤耐性菌が持ち込まれている可能性がある。また、留鳥との間にも相関がみられたが、生息域が薬剤耐性菌で汚染されていることが予想される。今回、環境DNA分析で保菌動物を推定したが、本手法は野外環境における薬剤耐性菌の実態の把握に貢献できるだろう。


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