| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-349  (Poster presentation)

動物の社会性の進化
Evolution of animal sociality

*Yuki YAMASHITA, Takashi MAKINO(Tohoku Univ.)

多くの動物が種を問わず他個体を認識し、相互に作用して生息している。なかでも群れ行動や共同繁殖といった協力的な行動は社会性をもつ動物の行動的な特徴の一つである。社会性をもつ動物は無脊椎動物から脊椎動物まで幅広い分類群で存在しており、これまで行動学的または生態学的な手法によって社会性と適応度との関連性が研究されてきた。近年は、ゲノムデータの蓄積が急速に進んだことによって、動物の社会性やその進化をゲノム科学的手法から解明する研究が可能になってきた。特に、ハチやアリ、シロアリなどの真社会性昆虫を含む無脊椎動物を対象に比較ゲノム解析が盛んに行われている。例えば、クモにおいて、単独性の種に比べて社会性の種で拡大した遺伝子ファミリーの数が多いことや、行動や免疫に関する遺伝子の進化速度が速いことなどが示されている (Tong et al., 2020)。このように、動物の社会性とゲノム中の特徴の関連が明らかになってきている一方で、脊椎動物では、そのような研究例は少なく未解明な点が多い。そこで本研究では、脊椎動物において社会性の有無とゲノム中の特徴の関連を解明することを目的とし、社会性の種と単独性の種を含む食肉目4種(ネコ、ライオン、ヒョウ、アムールトラ)で遺伝子ファミリーの変化について解析を行った。遺伝子情報をEnsemblデータベースより取得し、進化過程における遺伝子ファミリーの増減を調べた。対象種の行動は、ミシガン大学が提供するAnimal Diversity Webの記載に基づいてライオンを社会性、それ以外の3種を単独性と定義した。解析結果から、拡大した遺伝子ファミリーの数は社会性であるライオンが最も多いことが分かった。また拡大した遺伝子ファミリーに対してGene Ontology (GO) 解析も行った。GO解析の結果と、今後の研究内容や解析の方向性についてポスターで議論したい。


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