| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-362  (Poster presentation)

ブナ科コナラ属における繁殖形質多様化の進化
Evolution of reproductive trait diversification in the genus Quercus.

*夫婦石千尋(九州大学), 今井亮介(九州大学), 矢原徹一(QOU), 佐竹暁子(九州大学)
*Chihiro MYOTOISHI(Kyushu Univ.), Ryosuke IMAI(Kyushu Univ.), Tetsukazu YAHARA(Kyushu Open Univ.), Akiko SATAKE(Kyushu Univ.)

ブナ科は受精遅延というユニークな形質を持っている。受精遅延とは受粉から受精までに数週間から1年要する現象のことであり、この現象によってブナ科の結実年は1年成と2年成の2パターンに分けられる。1年成の種は数週間から1ヶ月ほど受精遅延し、開花と同年に結実する。また、2年成の種は受精遅延が半年から1年ほど続き、開花の翌年まで受精遅延したのちに結実する。基本的にブナ科は属ごとに1年成・2年成が決まっているが、コナラ属のみ1年成・2年成の種の割合がほぼ等しい。よって、コナラ属の結実年の祖先形質が1年成・2年成のどちらなのかを調べることで、結実年の進化過程(1年成→2年成or2年成→1年成)が明らかにできると考える。そのため、本研究では先行研究で示されたコナラ属253種の系統樹を用い、結実年(1年成・2年成)の祖先形質推定と形質推移率の算出を行った。今回用いた253種の分布域の内訳は、北米が152種、アジアが65種、ヨーロッパが17種、その他が19種、と北米の種が大半であった。形質情報はOaks of the worldとFlora of North America から主に収集し、Kew Herbariumなどの標本を用いて確認を行った。祖先形質推定と形質推移率の算出はBayesTraitsとRASPを用いて行った。結果としては以下の2つが示された。(1) 1年成が祖先形質である確率は0.44、2年成が祖先形質である確率は0.56であった。(2) 形質推移率を最尤法で推定したところ、1年成から2年成に進化した確率は53.7%、2年成から1年成に進化した確率は90.1%となった。以上の結果から、2年成から1年成への進化が起こりやすい、ということが分かった。
今回の解析では祖先形質が1年成・2年成のどちらなのかを決定することは難しかったため、今後は属レベルでの多様性が最も高いアジアの種を更に追加して系統樹を再度作成することで、祖先形質推定の精度向上を行う予定である。


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