| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-365 (Poster presentation)
ほとんどの植物は、光合成によって自ら合成した栄養で生きる独立栄養生物であるが、一部には菌に寄生して生育する菌従属栄養植物がみられる。このような植物では、葉が無く光合成を行わないなど様々な形態的、生態的な変化が起こっているが、その遺伝的背景は不明である。本研究ではラン科シュンラン属(Cymbidium)に属する混合栄養植物シュンラン(C. goeringii)、ナギラン(C. nagifolium)(両種とも有葉)および菌従属栄養植物マヤラン(C. macrorhizon)(無葉)のゲノムをナノポアシーケンサーと第2世代シーケンサーを併用して解読し、比較した。その結果、シュンランのゲノムを基準としてナギランよりもマヤランのエキソンに多くの変異がみられることが明らかになった。また、RNA-seqによりシュンランの葉、茎、根で発現している遺伝子を推定し、シュンランを基準としてナギランよりマヤランでより多くの変異がある遺伝子を調べたところ、葉や茎で発現している遺伝子より根で発現している遺伝子において多くの変異が見られた。最後に、シュンランを基準としてナギランよりもマヤランでより多くの変異が見られる遺伝子を探索したところ、およそ半数はトランスポゾンまたは機能不明の遺伝子だったが、残り半数は光合成に関わる遺伝子や、抗菌に関わる遺伝子、ジャスモン酸に関わる遺伝子やオーキシンに関わる遺伝子だった。予想に反し、葉の無い植物であるマヤランで葉の形成に関わる遺伝子に多くの変異が入っていることは確認できなかったが、これは菌従属化栄養への進化で重要なのは葉ではなく根での変化であることを示唆している。