| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-372  (Poster presentation)

近縁な線虫種間の体サイズ進化における転移因子の役割 【B】
The role of transposable elements on the body size evolution between closely related nematode species. 【B】

*河原数馬(東北大学・院・生命), 稲田垂穂(東北大学・院・生命), 田中龍聖(宮崎大学・医), Mehmet DAYI(Medicine, Univ. of Miyazaki), 菊地泰生(宮崎大学・医), 杉本亜砂子(東北大学・院・生命), 河田雅圭(東北大学・院・生命)
*Kazuma KAWAHARA(Life Sciences, Tohoku Univ.), Taruho INADA(Life Sciences, Tohoku Univ.), Ryusei TANAKA(Medicine, Univ. of Miyazaki), Mehmet DAYI(Medicine, Univ. of Miyazaki), Taisei KIKUCHI(Medicine, Univ. of Miyazaki), Asako SUGIMOTO(Life Sciences, Tohoku Univ.), Masakado KAWATA(Life Sciences, Tohoku Univ.)

近年発見された線虫Caenorhabditis inopinataは姉妹種のC. elegansと比べて様々な形質が大きく異なっており、例えば体サイズは近縁種内で保存された形質でありながら1.5倍から2倍ほども大きく異なる。このような大規模な進化を起こす要因は未だ解明されていない。本種のゲノムの特徴に転移因子(TE)の増加がある。TEとは自律的に複製・転位する塩基配列であり、近傍遺伝子の発現を変化させる場合がある。本研究では、体サイズ進化をもたらした遺伝子を探索するためにC. elegansC. inopinataの遺伝子発現量を比較すると共に、種間の遺伝子発現量の違いとTE挿入の有無との間にゲノムワイドな関係があるかどうかを検証することで、TEがC. inopinataの体サイズ進化に果たした役割を調査した。
 遺伝子発現量のプロファイリングとGOエンリッチメント解析の結果、「コラーゲン」や「上皮細胞の成長」に関わる遺伝子が一貫した発現パターン(C. inopinataの方が発現量が高く、特にL4幼虫期に高い)を示し、C. inopinataで見られるL4幼虫期から成虫期における急激な体サイズ増加にこれらの遺伝子が関わることが示唆された。また、特定のTEが一方の種のみで挿入している遺伝子群が種間で発現量が異なる傾向にあるかどうかを検証したところ、C. inopinata特異的にTE(DNA型やLINE)が挿入している遺伝子群にはC. inopinataの方が発現量が高い遺伝子が多かった。特にLINEについては、上記の「C. inopinataの方が発現が高く、特にL4幼虫期に高い」発現パターンを示す遺伝子群にのみ特異的な挿入が有意に多く見られたことから(BH-q < 0.05)、LINEがコラーゲンや上皮細胞の成長に関与して体サイズ増大に関与した可能性が示唆された。


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