| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-382  (Poster presentation)

アリにおける腸内共生細菌の新規伝播様式 【B】
A pseudo-vertical transmission of bacterial symbiont in an ant 【B】

*Rio YAMASHITA(Kwansei Gakuin University, University of the Ryukyus, AIST)

昆虫と細菌の共生関係は自然界に広くみられる一般的な現象であり、共生細菌は宿主昆虫の栄養状態や生活史、繁殖などに大きな影響を与える。特に、昆虫宿主に特定の細菌種が高頻度かつ恒常的に共生している場合、共生細菌の特殊な伝播様式や機能の進化が疑われる。我々が研究対象とする真社会性ハチ目昆虫のアリ類もさまざまな細菌種と強固な共生関係を築いている。先行研究では、女王アリの持つ共生細菌がコロニー内に伝播され、栄養代謝に寄与することでその社会の維持に重要な役割を果たすことが知られていた。しかし、最近我々は日本産トゲオオハリアリにおいて、ワーカーの腸内細菌叢の大部分を占める共生細菌 (Firmicute Symbiont: FS) が女王には殆ど感染していないことを発見した。このことは、共生細菌の新規伝播様式やカースト特異的な機能の存在を示唆している。そこで、本研究ではトゲオオハリアリにおけるFSの伝播様式及び宿主に対する機能を明らかにするため、以下の実験を行なった。まず、FSを抗生物質により除去したワーカー(FS)を、本来のFS感染ワーカー(FS+)の糞が残存する巣箱で飼育したところ、調べた全個体がFSを再獲得していた。この結果は、FSがワーカーの糞を介して容易に伝播されることを示している。次に、昆虫病原菌に対する反応を比較したところ、FS+ワーカーに比べFSワーカーでは生存率が有意に低下し、その低下率は巣外で働くワーカーで顕著だった。これらの結果からFSがコロニーに防衛機能を付与すると考えられた。以上の結果から、トゲオオハリアリ-FS共生関係の進化・維持機構を議論する。


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