| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-390  (Poster presentation)

植物の個体間相互作用が被食防衛と資源獲得への投資の共進化に及ぼす影響
Joint evolution of associational plant defense and accessibility for resources

*瀬川有太郎(京都大学), 伊藤公一(北海道大学, 京都大学), 山内淳(京都大学)
*Yutaro SEGAWA(Kyoto Univ.), Koichi ITO(Hokkaido Univ., Kyoto Univ.), Atsushi YAMUCHI(Kyoto Univ.)

 植物には被食に対する防衛レベルに多型が見られる場合がある。こうした防衛レベルの多型は、ある個体の防衛が近接個体の防衛にも寄与する防衛の連合効果の観点から、協力ゲームにおける進化的分岐と結びつけて議論されてきた。そこでは、各個体は協力のコストを払うことで利益を得ることができ、その利益とコストの差が個体の適応度と定義されている。しかし植物の個体内での資源分配を考えると、適応度は防衛による利益とコストの差ではなく、繁殖への投資と、防衛形質への投資で実現した防衛効果の積として定式化すべきであろう。このような枠組みのモデルを我々が解析したところ、防衛の進化的分岐は生じないことがわかった。そこで本研究では、地上部での防衛をめぐる相互作用に加えて、個体間の地下部での資源をめぐる相互作用を考慮し、地下部での資源獲得と地上部での防衛が同時的に進化をする状況をモデル化することによって、防衛レベルの進化的分岐が生じるメカニズムを解析した。
 各個体は資源獲得のために地下部へ投資するが、このとき地下部で隣接する他個体との間に相互作用が生じると考える。その際、相互作用が双方の個体に利益をもたらす場合と不利益をもたらす場合の両方が考えられる。こうした個体間相互作用の下で、各個体は地下部への投資を通じて資源を獲得し、それを地上部において繁殖と防衛のそれぞれに投資する。ここで、防衛の進化力学を一般的に扱うために、連合効果として近接個体に植食者の忌避を通じて利益をもたらす連合抵抗と、植食者の他個体への移動を通じることなどで不利益をもたらす連合感受の2つの場合を考慮する。
 モデル解析の結果、地上部と地下部の相互作用の関係に応じて様々な進化動態の特徴が見られた。特に地下部の相互作用が個体間に利益をもたらす場合に地下部への投資に分岐が生じる場合があり、それを反映した形で防衛への投資も分岐する場合があることが分かった。


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