| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-391 (Poster presentation)
タイリクバラタナゴRhodeus ocellatus ocellatusは、中国の揚子江から日本へ国外外来種として人為導入され、各地で在来タナゴ類との交雑、および餌資源・産卵資源をめぐる競合を生じさせている。富山県氷見地方には希少な在来タナゴ類が生息するが、当地方においても、タイリクバラタナゴによる在来タナゴ類の繁殖行動の阻害、および在来タナゴ類との交雑が報告されている。さらに、最近行われた環境DNA分析を用いた生物相調査において、氷見市では生息が確認されていないニッポンバラタナゴR. o. kurumeusの遺伝子が検出された。タイリクバラタナゴはニッポンバラタナゴと容易に交雑することが報告されている。本研究では、氷見市の万尾川・仏生寺川水系におけるニッポンバラタナゴの存否、およびバラタナゴ類の交雑状況の実態を明らかにすべく、同水系において採集されたバラタナゴ類のDNAサンプルについて、mtDNA cytb領域を対象としたRFLP分析を実施した。RFLP分析の結果、万尾川水系においては194サンプル中32サンプル、仏生寺川水系においては46サンプル中8サンプルからニッポンバラタナゴのmtDNAが、それ以外からはタイリクバラタナゴのmtDNAが、それぞれ検出された。富山県はニッポンバラタナゴの分布域に含まれず、また解析個体の形態的特徴はニッポンバラタナゴの特徴を示さなかったことから、当地方にニッポンバラタナゴが生息する可能性は低いと考えられる。さらに、シーケンス解析の結果、検出されたニッポンバラタナゴDNAの塩基配列は、岡山県旭川水系および大阪府大和川水系ため池のバラタナゴ類の塩基配列に類似することが明らかになった。これらの結果は、検出されたmtDNAが、他地域から導入されたニッポンバラタナゴとタイリクバラタナゴの交雑個体に由来することを示唆している。