| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-396 (Poster presentation)
三宅島では、ネズミ駆除を目的として1982年頃にニホンイタチ(以下イタチ)が導入され、それ以降、準固有種であるアカコッコやオカダトカゲが大幅に減少した。本種の食性については、導入直後(1984年)と導入10年後(1993年)、そして2000年噴火直後の記録がある。導入直後はオカダトカゲが糞中で優占的だったが、強い採食圧により減少し、導入10年後時点でほとんど糞から検出されなくなった。その導入10年後ではムカデ類の優占となり、2000年噴火後も同様の状態であった。その後、植生の回復により、イタチの食物となる動物も変化したと推測される。そこで本研究では、イタチの2020年時点での食性を解明し、過去の食性調査の結果と比較して変遷を解明することを目的とした。
2020年の糞内容物は、出現頻度でみると昆虫が主体であることがわかった。季節変化があり、夏はコウチュウ目、秋はバッタ目、冬はハエ目(幼虫)の出現頻度が高かった。また季節を通してゴキブリ目が安定的な出現頻度を示した。その多くは国内外来種サツマゴキブリであり、本種がイタチの安定的な餌資源として寄与していることが考えられる。各糞中における被度でみた場合も昆虫が占めることが大半であった。一方、海岸や森林等の場所ごとの食性については、噴火直後はその違いが大きかったが、2020年では小さくなった。これは植生が回復し、島全体に昆虫が増加したことが反映されたためと考えられる。
2020年の糞内容物は、昆虫以外では、冬に鳥類の出現頻度が高まる傾向にあった。これは昆虫が減少する時期であり、餌資源利用にシフトが起こったためと考えられる。また被度でみた場合、鳥類および哺乳類は、全季節の出現頻度は低い一方、出現時の被度は高い傾向にあった。
これらの食性変化から、三宅島のイタチは、新しい環境において餌資源に強い影響を与えながら、状況によって変化する餌動物の量的な変化に合わせて日和見的に主要食物を変えてきたと考えられた。