| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-398 (Poster presentation)
ムネアカハラビロカマキリ(以下ムネアカ)は,2000年代に入り日本各地への侵入が確認された外来カマキリである.ムネアカの侵入地域では在来近縁種であるハラビロカマキリ(以下ハラビロ)とムネアカが置き換わる現象が報告されている.ムネアカの分布拡大速度は年間約100 mと推定されているが,実際はより早い速度で拡散する可能性が指摘されている.そこで本調査では,2019年と2021年にムネアカとハラビロの分布調査を実施し,分布状況の年比較を行うことでムネアカの分布拡大速度について検討した.岡崎市内のムネアカとハラビロの分布を把握するため,2019年および2021年に車で低速走行し,道路上のカマキリ類を記録した.カマキリ類の確認地点より最外郭法を用いて分布域を推定し,分布面積を算出した.また,分布域に含まれなかったデータから分布域までの最短距離を拡散距離と仮定し,分布拡大速度を考察した.その結果,ムネアカの分布面積は2年間で約114 km2から約188 km2に拡大していたが,ハラビロは約207 km2から約184 km2に減少していた.2021年に得られたデータのうち,2019年の分布域に含まれるデータの割合は種間で有意に異なり,分布域の外側で確認されたハラビロは8個体(9.9%)にとどまったの対し,ムネアカでは122個体(33.2%)が2019年の分布域外で確認された.ムネアカの2年間の拡散距離は,中央値で約1 km,最大値で約4.2 kmであり,ムネアカは少なくとも1年間で500 m移動していることが分かった.本調査は最外郭法を用いて分布域を定義したため,拡散距離を過小評価していると考えられるにもかかわらず,ムネアカの分布拡大速度はこれまで推定されていた年間約100 mより早いと考えられた.今後はムネアカの分布拡大速度を念頭に,対策を進める必要があるだろう.