| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-399  (Poster presentation)

伊豆大島におけるキョンによるアシタバ食害
Feeding damage on Angelica keiskei by Reeves's muntjac in Izu Ohshima island.

*石井陽大, 上條隆志, 越智郁也(筑波大学)
*Yodai ISHII, Takashi KAMIJO, Ikuya OCHI(Tsukuba Univ.)

特定外来生物に指定されているキョンは伊豆大島や房総半島に侵入しており、大島では自然植生や農作物へのキョンによる被害が報告されている。大島の特産品であるアシタバは栽培されるだけなく、本来広く山野に自生しており、島民が古くから利用してきた欠かせない食材である。アシタバについてもキョンによる被害報告はあるが、自生個体群を含めた被害状況については検討されていない。そこで、本研究では主に自生するアシタバを対象として食害実態と食害率に与える要因について明らかにすることを目的とする。伊豆大島北部と南部の計15ヶ所の道路沿いに、約500mのルートを設定し、ルート沿いのアシタバの高さ、食痕を記録した。調査ルートから100mのバッファを作成し、植生図データを用いて、バッファ内の植生タイプを求めた。標高及び植生タイプを説明変数、アシタバの被害個体数等を応答変数、アシタバの調査個体数をオフセット項としてGLMによる解析を行った。記録したアシタバの個体数は、1769個体となった。GLMによる解析の結果、食痕数等について、標高が有意な正の効果を与えていた。アシタバの被害個体数割合と密度の線形回帰の結果、アシタバの密度がアシタバの被害個体数割合に対して有意な負の効果を及ぼしていた。伊豆大島は、集落や耕作地が低標高地に限られており、標高の影響は駆除を含む人為圧が関係していると考えられる。また、密度が低いルートでは食害率が50%を超える例もあり、局所的にアシタバの消失が進行する可能性がある。本研究により、アシタバについて自生地での保全の必要性が示された。このことから、自生個体群を含めたアシタバの保全対策を検討する必要があると考えられる。


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