外来種は近縁な在来種と交雑することで，移入地の環境に適応し拡大することがある．日本の在来タンポポと外来種のセイヨウタンポポの間には，三倍体または四倍体の雑種が生まれることがある．雑種はセイヨウタンポポ同様に無融合生殖で増え，セイヨウタンポポ以上に広がっている．しかし，雑種タンポポがどこで生まれ，どう拡大したのかは未だよく分かっていない．本研究では，葉緑体DNAハプロタイプ解析や次世代シーケンスGRAS-Diで，雑種の地理的遺伝構造を調べ，在来種やセイヨウタンポポと比較することで，雑種の起源と分布拡大過程を推定した．その結果，葉緑体DNAと核DNAの両方で，三倍体雑種は同じ地域の在来種と共通する遺伝子を持っていたが，四倍体雑種の多くは在来種と共通する遺伝子を持っていなかった．これは三倍体雑種の起源が現在の分布域の近くであることを，四倍体雑種の起源が日本でない可能性を示唆する．また，三倍体雑種にはセイヨウタンポポ以上に多様なクローンが存在し，その分布範囲は限定的だったが，四倍体雑種のほとんどは日本中に広く見られる単一のクローンだった．以上の結果より，雑種タンポポの起源と拡大過程は，倍数性により大きく異なることが明らかになった．

Triploid and tetraploid hybrid dandelions between native and introduced dandelions have been spread in Japan. To elucidate their origins and spreading processes, we studied the geographic genetic structure of dandelions in Japan. The results indicate that the origin and spreading process of triploid and tetraploid hybrids were very different. While triploid hybrids have emerged many times in different parts and each of them has gradually expanded their distribution, tetraploid hybrids have spread widely throughout Japan from a single clone of unknown origin.