| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-401  (Poster presentation)

外来植栽樹木4種における野生化リスクの評価
Eco-physiological assessment for the naturalization risk of four alien garden trees in Japan

*武輪千咲, 大﨑壮巳, 中坪孝之(広島大学)
*Chisaki TAKEWA, Soshi OSAKI, Takayuki NAKATSUBO(Hiroshima Univ.)

 植栽樹木には外来樹木が多く利用されている一方で、野生化にともなう生態系への影響が懸念されている。適切に外来樹木を利用するためには、導入地での野生化リスクを事前に評価する必要があるが、そのための統一した基準は定められていない。
 本研究では、国内での植栽数が多い外来樹木4種を対象とし、野生化リスク評価の手法を検討した。野生化のリスク評価にあたり、①種子生産および散布、②発芽、③実生の定着の3つのライフステージの生理生態的特性を調べた。さらに、野外調査と文献調査を行ない、これらの結果を統合することで野生化リスクの評価手法の実用性を検討した。
 実験対象とした4種のうち、①すべての種で種子の生産が確認されたものの、充実率はモミジバフウ(Liquidambar styraciflua L.)(90%以上)以外の種では著しく低かった。また、②発芽率に関しても、モミジバフウ以外の種では低い結果となった。③実生の定着に大きく影響する光条件の影響を被陰実験によって調べたところ、いずれの樹種においても実生の生存が確認された。このことから、実生の耐陰性という側面では、研究対象とした外来樹木の野生化はほとんど制限されないと考えられる。
 野外調査および文献調査の結果、本研究で対象とした樹種の一部が河川周辺で野生化していることが確認された。特に、本研究における調査区内では、モミジバフウの野生化個体が顕著に多い結果となった。
 以上のことから、本研究で対象とした外来樹木のうち、種子生産および発芽の段階で制限を受ける樹種では、野生化リスクが低いと考えられる。その一方で、十分な種子を生産し、高い発芽能力を有するモミジバフウでは、野生化リスクが高いことが示唆された。本種は環境省の生態系被害防止外来種リストには掲載されていない。そのため、本研究で用いた手法は、これまで見落とされていた野生化リスクを評価できると考えられ、今後更なる改良を行っていく。


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