| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-402  (Poster presentation)

アライグマ餌トラップの有効性評価
The effectiveness of raccoon bait traps

*渡邉英之(東京大学大学院新領域)
*Hideyuki WATANABE(GSFS, UTokyo)

 アライグマ(Procyon lotor)の生息密度や訪問状況を把握することは,防除計画策定および捕獲において重要である.しかし,生息状況確認手法として一般的な自動撮影カメラは高価で大量設置が難しい. そこで環境省はアライグマの安価で簡易的な訪問確認手法としてアライグマ餌トラップ法を開発した.これは手先が器用だというアライグマの特性を利用し,ペットボトルなどの筒状容器の中に設置した判別餌の消失によってアライグマの訪問を確認する手法である.しかし,この手法の有効性については報告がない.そこで2021年5月から12月にかけてアライグマ餌トラップと自動撮影カメラをセットで1タームにつき2週間設置し, 1週間おきに確認・補充を行った.合計6ターム,延べ44セット設置した.①アライグマ餌トラップに対する獣種ごとの反応と②判定結果と撮影頻度の整合性の2つの観点から有効性を検証した.
 まず,アライグマ餌トラップに対する獣種ごとの行動を「採餌成功」「採餌失敗」「忌避」「通過」分類した.「採餌成功」はアライグマでのみ確認された一方で,アライグマによる「採餌失敗」や「通過」も多かった.アライグマ以外の中大型哺乳類はほとんどが「忌避」「通過」し,「採餌成功」は確認されなかった.以上から,アライグマ餌トラップの偽陽性率は低く,偽陰性率は高い可能性が示唆された.
 続いてアライグマ餌トラップの判定結果と撮影頻度指数の整合性を検証した.アライグマ餌トラップの判定結果(2週間に2回確認・集計した結果)を目的変数,撮影頻度指数を説明変数として多項分布のGLMを構築した.その結果,アライグマ餌トラップの判定結果は RAIが10-30の地域で有効であることが示唆された.


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