| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-408  (Poster presentation)

長野県上伊那地方におけるアカハライモリの生息分布と環境要因
Habitat distribution and environmental factors of Japanese fire belly newt in Kamiina district, Nagano Prefecture

*加藤久樹, 大窪久美子(信州大学農学部)
*Hisaki KATO, Kumiko OKUBO(Shinshu Univ.)

長野県上伊那地方におけるアカハライモリの生息分布と環境要因

   加藤 久樹(緑地生態学研究室)  

アカハライモリ(Cynops pyrrhpogaster)は本州および四国、九州に広く分布する日本固有の有尾両生類である。本種は水田水域等の普通種であったが、全国的に減少しており、近年の圃場整備事業等による環境改変などの影響が懸念される。現在は環境省版と長野県版R.L.で準絶滅危惧NTに指定されるが、保全対策に不可欠な生活史や生息環境の条件などに関する知見は非常に限られている。そこで本研究の目的は本種の生息が確認されている上伊那地方における生息状況と環境要因を明らかにすることとした。
水田地域および、ため池や湿地等の止水域(以下、「池沼」)を対象に調査が行われた。本種の生息調査は、7つの水田地域(195筆)で2021年6〜8月に見つけ採り法を用いて夜間に実施された。一方、池沼は7地点で同年8〜10月にすくい網採取法を用いて昼間に実施された。また、各調査地の土地利用調査は踏査により記録され、土地利用区分や環境等との関係から生息に重要であると考えられる要因が検討された。
全調査では成体が130個体、幼生は30個体が確認された。成体は3つの水田地域と4つの池沼で確認された。その内、2つの水田地域と1つの池沼でのみ幼体も確認された。本種が確認された水田地域では、土水路と森林の割合が高く、池沼では森林の占める割合が高かった。
森林内は乾燥から避けることができ、餌資源も多く存在することから、幼体が陸上での生活で利用すると考えられた。一方、土水路は、非耕作期においても水が残されていることが多いため、止水環境が確保されることや、産卵や冬眠場所として利用されることから、これらの環境が本種の生息に影響すると考えられた。本種は移動性が低いため、水田や池沼の一定の範囲内に、異なる生活史段階で必要となる土水路や森林といった産卵場所や幼体の陸上生活の場、越冬を行える環境の存在が重要であると考えられた。


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