| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-412  (Poster presentation)

クロゲンゴロウおよびコガタノゲンゴロウ幼虫の生態比較
Ecological comparison of Cybister brevis and Cybister tripunctatus lateralis larvae

*福岡太一(龍谷大・院・理工), 大庭伸也(長崎大・教育), 田邑龍(龍谷大・理工), 久保星(龍谷大・院・理工), 森脇優介(龍谷大・院・理工), 藤田宗也(龍谷大・院・理工), 太下蓮(龍谷大・院・理工), 太田真人(龍谷大・里山研), 遊磨正秀(龍谷大・先端理工, 龍谷大・里山研)
*Taichi FUKUOKA(Ryukoku Univ. ST), Shin-ya OHBA(Nagasaki Univ.), Ryo TAMURA(Ryukoku Univ.), Sho KUBO(Ryukoku Univ. ST), Yusuke MORIWAKI(Ryukoku Univ. ST), Soya FUJITA(Ryukoku Univ. ST), Ren OSHITA(Ryukoku Univ. ST), Masato OTA(RCSS), Masahide YUMA(Ryukoku Univ. AST, RCSS)

 近年,ゲンゴロウ科は生息地の悪化や侵入的外来種の侵入などにより,個体数が減少している.その一方で,コガタノゲンゴロウの個体数は増加しており,分布域が拡大している.増加しているコガタノゲンゴロウは同属で減少しているクロゲンゴロウとニッチが重複することから,競争関係にあると考えられている.先行研究においてコガタノゲンゴロウの成虫はクロゲンゴロウの成虫よりも餌に早くたどり着き,摂食量も多いことから,コガタノゲンゴロウは競争に有利であることが明らかとなっている.しかし,幼虫での競争関係については明らかとなっていない.そこで本研究では野外調査と室内実験によって両種の生態的知見を収集し,比較することで競争関係にあるかを検討した.野外調査では,鳥取県にある水田と側溝において両種の発生消長,定位場所を調べた.室内実験では,両種の採餌生態である捕食量,餌到達時間,行動を調べた.
 野外調査の結果では,両種は6月から9月にかけて出現し,出現時期は概ね同調していた.また,両種の定位場所に違いは認められなかった.室内実験の結果では,両種の捕食量に差は認められなかったが,餌到達時間はコガタノゲンゴロウがクロゲンゴロウよりも早いことが分かった.また,両種は主に水中あるいは水面で植物にとまり休息している行動パターンを示し,違いは認められなかった.
 これらの結果から,両種の幼虫は空間的にも時間的にもニッチが重複し,競争関係にある可能性が示唆された.


日本生態学会