| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-412 (Poster presentation)
近年,ゲンゴロウ科は生息地の悪化や侵入的外来種の侵入などにより,個体数が減少している.その一方で,コガタノゲンゴロウの個体数は増加しており,分布域が拡大している.増加しているコガタノゲンゴロウは同属で減少しているクロゲンゴロウとニッチが重複することから,競争関係にあると考えられている.先行研究においてコガタノゲンゴロウの成虫はクロゲンゴロウの成虫よりも餌に早くたどり着き,摂食量も多いことから,コガタノゲンゴロウは競争に有利であることが明らかとなっている.しかし,幼虫での競争関係については明らかとなっていない.そこで本研究では野外調査と室内実験によって両種の生態的知見を収集し,比較することで競争関係にあるかを検討した.野外調査では,鳥取県にある水田と側溝において両種の発生消長,定位場所を調べた.室内実験では,両種の採餌生態である捕食量,餌到達時間,行動を調べた.
野外調査の結果では,両種は6月から9月にかけて出現し,出現時期は概ね同調していた.また,両種の定位場所に違いは認められなかった.室内実験の結果では,両種の捕食量に差は認められなかったが,餌到達時間はコガタノゲンゴロウがクロゲンゴロウよりも早いことが分かった.また,両種は主に水中あるいは水面で植物にとまり休息している行動パターンを示し,違いは認められなかった.
これらの結果から,両種の幼虫は空間的にも時間的にもニッチが重複し,競争関係にある可能性が示唆された.