| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-413  (Poster presentation)

渡良瀬遊水地における冬期の湖底干出はコウノトリの採餌環境を創出する
Exposure of basin bottom during winter provides foraging habitat for Oriental White Stork at Watarase Flood Retarding Basin

*立川大聖(東邦大学), 阿部聖哉(電力中央研究所, 東邦大学), 長谷川雅美(東邦大学)
*Taisei TACHIKAWA(Toho Univ.), Seiya ABE(CRIEPI, Toho Univ.), Masami HASEGAWA(Toho Univ.)

渡良瀬遊水地は、栃木県、群馬県、埼玉県、茨城県にまたがる本州最大級の湿地帯の一つで、多くの湿地性生物の重要な生息地であり、2012年にラムサール条約湿地に登録されている。2015年に野田市から試験放鳥されたコウノトリは、2018年から渡良瀬遊水地に定着し始め、2020年にはひかる(雄、個体番号J0128)と歌(雌、個体番号J0181)が遊水地内のコウノトリ用の人工巣塔で繁殖を行った。これは、1971年に日本でコウノトリが野生絶滅して以降、東日本で初めての野外繁殖であり、大きな話題になった。同年秋に母親の歌が死亡する事故があったが、2021年には別個体の雌(レイ、個体番号J0238)が飛来してつがいとなり、同じ巣塔において繁殖が行われた。ひかるとレイは引き続き渡良瀬遊水地に定住し、2022年2月現在、次の繁殖行動へ向けて営巣活動を行っている。ひかるとレイは千葉県野田市こうのとりの里から放鳥された個体で、背中に装着されたロガーの位置情報から、彼らの利用環境は季節変化すること、1年を通して遊水地周辺に生息していることが確かめられている。特に冬期は、調節地内にある谷中湖の利用頻度が一際増加する。谷中湖では、水質保全対策のために湖底を干出させる“干し上げ”が行われ、水位が低下して浅くなった場所でコウノトリが採餌を行っていると考えられている。しかしながら、干し上げとコウノトリの利用環境の関係性はまだ定量的に示されていない。本研究では、コウノトリの位置情報と谷中湖の水位との関係性、および衛星画像から算出した修正正規化水指標(MNDWI)と水位の関係性から、冬季の谷中湖における干し上げがコウノトリの利用環境を創出するのかを定量的に評価した。


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