| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-417  (Poster presentation)

棚田におけるカヤネズミの営巣環境の選好性
Preference for the nesting environment of Harvest mice in Rice terraces

*湯浅拓輝(慶應義塾大学)
*Hiroki YUASA(Keio Univ.)

 カヤネズミ(Micromys minutus)はイネ科やカヤツリグサ科等の葉を編んで営巣することから、生息地内の植物群落の構成種や質が密接に関係していると考えられる。本種は河川敷の他に、水田および畦畔にも生息するが、水田地帯においては、農作業の過程で生じる人為的撹乱に伴い、営巣環境は大きく変化する。従って、ミクロスケールでの潜在的な営巣適地の予測を行い、本種の生息に配慮した草地管理が重要であるが、水田地帯における本種の営巣選好性を示した研究は少ない。そこで本研究では、ドローンを活用した詳細な相関植生図と現地調査を組み合わせることで、棚田での本種の営巣選好性を明らかにすることを目的とした。
 調査は2018年に、神奈川県秦野市の棚田で行った。調査地をくまなく歩き、営巣の有無を確認した。2018年の5-11月にドローン(Phantom4)による空撮を行った。高度40m程度で撮影し、得られた画像を合成ソフト(MetaShape Professional)を使ってオルソ画像化した。低空で飛行させることで、高茎草本やツル性草本の種判別が可能となった。画像の判読と現地踏査を基にArcGISを用いて相関植生図を作成した。さらにArcGISにて対象地を10m四方のメッシュで覆い、各セル内の「カヤネズミの営巣の有無」、「優占植物種の面積」、「林縁までの距離」を算出し、一般化線形モデルで解析を行った。
 その結果、ヨシ、チガヤ、ススキ、アブラススキの面積がカヤネズミの営巣地選択に正の影響を示した。本種にとって、水田周囲の畦畔や湿地の草丈の高いイネ科多年生植物の選好性が高いことがわかった。これらの結果から管理頻度の異なる多様な草地タイプの維持が重要であると考えられる。


日本生態学会