| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-418  (Poster presentation)

希少野生動植物種タンゴスジシマドジョウの局所的な生息範囲
Limited range of spined loach Cobitis takenoi designated as National Endangered Species Of Wild Fauna and Flora in Japan

*八嶋勇気(近畿大学), 髙久宏佑(自然環境研究センター), 入口友香(自然環境研究センター), 北川忠生(近畿大学)
*Yuki YASHIMA(Kindai Univ.), Kosuke TAKAKU(Japan Wildlife Research Center), Yuka IGUCHI(Japan Wildlife Research Center), Tadao KITAGAWA(Kindai Univ.)

タンゴスジシマドジョウCobitis takenoiは京都府丹後地方の1河川のみに分布するコイ目ドジョウ科に属する小型の淡水魚である.本種は分布が極めて局所的であり,わずかな環境への影響によって絶滅する恐れがあるため,IUCNレッドリストおよび環境省版レッドリストでは絶滅危惧IA類として掲載されており,2019年からは種の保存法が定める国内希少野生動植物種にも指定されている.絶滅の危機に晒されている本種を保全するためには,基盤となる本種の生態的知見を蓄積することが必要不可欠となるが,本種はごく近年発見された種であるため知見が乏しい.本研究では,タンゴスジシマドジョウの野外集団の保全をおこなう上で,最も基礎的な知見となる本種の生息範囲と生息状況について調査した.水系全域の採集調査の結果,本種は既知の生息範囲である本流の流程区間約800 mに加え,前者とは離れた支流でも生息が確認された.後者の下流域には複数の河川構造物が配置されていたため,本流の集団とは独立した繁殖集団である可能性が示唆された.また,本種が認められた範囲で採集調査したところ,本種は河川内のごく一部の範囲にのみに生息が局限されているだけでなく,季節毎に本種の出現傾向が大きく変化していることが明らかになった.本種の野外集団を保全するためには,現在本種が生息している範囲のみではなく,より広域を視野に入れ配慮することが,生息範囲を急速に変化させる本種の保全を実施する上で必要であると考えられた.


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