| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-421 (Poster presentation)
マリゴケとは,一般的に水面近くまたは湖沼の水中に繁茂しているコケ類が水や波によって削られたり,ちぎれたりしたものが水底で回転するうちに丸や楕円になって岸辺に打ち上げられているものを指す.日本では北海道東部の屈斜路湖のマリゴケが有名であるが,近年,コケの生育地の一部である水環境の汚染,またプレジャーボートなどによる湖底環境への影響が懸念されている.弟子屈町では「弟子屈町指定天然記念物,屈斜路湖マリゴケ」という大きな標識を作製しているものの,ここ50年間に詳しい調査は行われていないのが現状である.そこで,本研究ではマリゴケやその構成種の分布,環境測定をすることで,生育環境を保全する上での一助とすることを目的とした.調査は,湖底のコケ群落の分布を抑え,その群落を利用している生物相,および水温や水質を測定した.また,マリゴケの分布および湖底のコケ群落を形成しているコケ植物を把握した.その結果,調査地の湖底にコケ群落が確認され,周辺には水生生物が7種確認された.水温推移は変化が少なかった.コケ群落は,着生基物が多い場所に形成されており,様々な水生生物に利用されていた.また,時期によってリンも豊富にあり,コケ群落にとって生育適地である考えられる.マリゴケの分布場所は40年前よりも減少しており,過去のマリゴケと比較し構成種の変化も認められた.マリゴケの減少は周辺環境の変化によるものと考えられるため,マリゴケが分布する地域におけるコケ類組成や周辺環境についてより詳細な調査必要である.今後は,コケ群落地の水や風の流れなどの周辺環境調査が望まれる.