| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-423  (Poster presentation)

都市でタヌキとアライグマは共存できる?-活動時間と食性の変化から-
Can raccoon dogs and raccoons coexist in urban? -Focusing on changes in activity patterns and food habits-

*佐々木翔哉, 大澤剛士(東京都立大学)
*Shoya SASAKI, Takeshi OSAWA(Tokyo Metropolitan Univ.)

都市化は緑地の減少を引き起こし、野生生物に対して様々な影響を与える。その影響として、生物多様性の減少等の負の影響はよく挙げられるが、都市に適応し繁殖成功率の上昇等に成功した種も存在する。中でも哺乳類は、近年都市に分布を拡大させている事例が多い。哺乳類は、人間活動に反応して資源利用、生態、行動を変化させることで、都市に適応する。この変化は、同所的に生息する複数種間において種間関係をも変化させる可能性がある。日本には、都市に適応し、資源利用や体サイズが似通っていて種間関係がよく議論されることから、資源利用、生態、行動の変化と、それに伴って変化する可能性がある種間関係を評価する上で適するタヌキとアライグマが定着している。本研究では、都市化の程度に違いがある複数の都市公園において、アライグマよりも資源利用、生態、行動を変化させることに柔軟であるタヌキの資源利用と都市化の関係、さらにタヌキとアライグマの種間関係を両種の遭遇回避行動によって公園ごとに評価した。結果、タヌキは季節による差異はありながら都市化に応じて昼間にも活動するようになること、餌資源として人工物への依存度が高まることが認められた。両種の遭遇回避行動からは、都市公園ごとにお互いを避けるような共通傾向や種の優劣は見いだせず、両種の間には直接的な競合関係はほとんど検出されなかった。結果から、タヌキは都市化の度合いに応じて資源利用を柔軟に変化させており、人工的な餌資源の利用が人間に対する警戒心の低下等を引き起こして、活動時間にも影響している可能性が考えられた。また、タヌキの柔軟な資源利用が、アライグマとの共存に繋がっている可能性をも考えられた。都市化は今後も進行する可能性が高く、タヌキの資源利用の変化はそれに応じてさらに変化していく必要があるため、今後の都市化の進行には注意していく必要がある。


日本生態学会