| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-426  (Poster presentation)

土地利用景観および営巣木スケールにおけるチゴモズの繁殖場所選択 【B】
Landscape and local scale nest-site selection by Tiger Shrike Lanius tigrinus 【B】

*立石幸輝(新潟大学・院・自然), 高岡奏多(新潟薬科大学・薬), 冨田健斗(新潟大学・院・自然), 鎌田泰斗(新潟大学・農), 関島恒夫(新潟大学・農)
*Koki TATEISHI(Grad. Sch. Sci. Niigata Univ.), Kanata TAKAOKA(NUPALS pharm.), Kento TOMITA(Grad. Sch. Sci. Niigata Univ.), Taito KAMATA(Niigata Univ. Agri.), Tsuneo SEKIJIMA(Niigata Univ. Agri.)

チゴモズLanius tigrinusは、環境省レッドリストにおいて絶越危惧ⅠA類に指定されているスズメ目の渡り鳥である。しかしながら、本種に対する研究報告は少なく、その生態がよくわかっていないため、適切な保全策が立案できていない。そこで、われわれは、本種の保全に活かすべく、繁殖場所選択において重要な環境要因を抽出するとともに、繁殖に重要なエリアを明らかにすることを目的に調査を行った。はじめに、2015~2021年に新潟県沿岸域において地域網羅的な踏査を行い、繁殖地点情報を集積した。次に、異なる空間スケールで起こる繁殖場所選択過程を明らかにするため、繁殖場所周辺の環境情報を2つの空間スケール(景観スケールと営巣木スケール)において抽出し、それぞれ統計解析を行った。景観スケールでは、得られた繁殖在地点を周辺の土地利用で説明する統計モデルを構築し、算出された期待値を同沿岸全域へ外挿することで潜在的な繁殖適地マップとした。営巣木スケールでは、2020~2021年に特定できた営巣木を対象に、営巣木を中心とした半径5mプロット内の植生に係るパラメータを測定し、ランダムに選出した木の同パラメータと比較することで営巣木特性を抽出した。上記解析の結果、景観スケールでは、本種が、集落に隣接する複雑な形状をした森林、とりわけ、長い林縁をもつ森林付近を繁殖場所として選好していること、また、幹線道路を忌避していることが明らかとなった。営巣木スケールでは、松が疎らな林であり、低木層の葉密度が高く、広葉樹の胸高直径の太い林内環境が、営巣木立地として好まれていることがわかった。これらの結果から、里山的な景観をもった二次遷移の進行した海岸林が本種の繁殖場所として重要な役割を担っており、本種の保全には、繁殖適地マップによって示された重要なエリアにおいて上述した林内環境を保全するとともに、幹線道路の開発の際には最大限の配慮をしていくことが重要であるといえる。


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