| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-427  (Poster presentation)

オサムシ科甲虫群集を用いた半自然草原における環境および生物多様性の評価手法
Environmental and biodiversity evaluation methods in semi-natural grassland using ground beetle communities

*本間政人(信州大院・総合理工研), 大窪久美子(信州大学農学部)
*Masato HONMA(Shinshu Univ., Grad. Sch.), Kumiko OKUBO(Shinshu Univ.)

 半自然草原は生産的機能の喪失に伴って面積が急減し、生物多様性の低下が顕著である。指標生物を用いた環境評価値としてはチョウ類の環境階級存在比ER(田中, 1988)等が知られている。本研究では環境選好性が強く、植生環境や生物多様性を評価可能な指標生物としてオサムシ科群集に注目した。しかし、先行研究の多くは森林等で行われ、半自然草原での研究は少ない。そこで、大規模な半自然草原を有する霧ケ峰高原やくじゅう地域で本分類群の群集構造を明らかにし、植生との関係性や環境評価への適用について検討した。
 調査区は霧ケ峰高原(草原8区・森林3区:計11区)と、くじゅう地域(草原14区・森林4区:計18区)の計29区で、群落の優占種等が異なった。調査は2020年と2021年に実施した。解析はSpearmanの順位相関係数ρやTWINSPAN解析等を用いた。様々な植生環境の調査区で得た知見から各種の指標価等を検討し、本科へのERの適用を試みた。
 オサムシ科は霧ケ峰高原では58種6,654個体、くじゅう地域では38種1,359個体が得られた。本科の多くは他分類群等と有意な相関があった。群集の組成や構造は地域や各植生間等で異なり、指標性の高い種も存在した。ERは霧ケ峰高原では採草地等の二次段階、くじゅう地域では耕作地等の三次段階の比率が高かった。さらに、同地域内でも植生環境の違いに対応し、各環境段階の比率が異なった。これらは植生管理の履歴や立地環境条件の違いが関係すると考えられた。
 以上、本科群集は地域や植生環境間で組成や構造が異なった。一方、地理的に離れた各環境において共通種が存在していた。本科の多くは植生環境のみならず他分類群の多様性を評価できる可能性が示唆された。よって、本手法のオサムシ科群集への適用は可能と考えられた。なお本研究はJSPS科研費 JP19K06107の助成を受けたものである。


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