| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-440 (Poster presentation)
希少な動植物が生育・生息する半自然草原は、管理放棄や土地利用開発によってその面積が急減しており、半自然草原における生物多様性保全は喫緊の課題となっている。本環境における生物多様性は人間活動と地理的要因、景観的要因などの条件により影響されることが知られているが、それら複数の要因を考慮した保全対策の検討は限られている。また、機能的多様性は植物群集の存続に関連する機能形質の集約パラメータと考えられており、半自然草原における植物群集の変容を捉える手段として利用されている。
本研究では、富士北麓に分布する5地点の草原で植生調査、開花調査、形質調査を行った。3地点の草原では、現在も年一度の火入れ管理が継続されており、2地点では管理が放棄されている。植生調査は126個の1m×1mプロット、開花調査は84本の幅2m、長さ15mのラインで調査を行った。今回は火入れによる人間活動にくわえ、地理的要因、景観的要因がどのように植物群集に影響しているのか、また全種と希少種、および機能的多様性それぞれに影響する要因が異なっているのかを検討した。
人間活動による影響を検証するために、調査で得られた種数データに対しそれぞれの草原を説明変数として多重比較検定を行い調査地間での違いを調べた。さらに他の要因による影響を明らかにするためパス解析を行った。
解析の結果、全種、希少種、機能的多様性に対して、異なる要因が影響を与えていることが示された。全種と希少種では人間活動、地理的要因、景観的要因の全てで、全種と機能的多様性では景観的要因の影響に違いが見られた。半自然草原における植物多様性の保全には人間活動以外に地理的・景観的条件を考慮する必要があり、目的に応じて異なる条件を加味した植物種のモニタリングや管理法の検討が重要である。