| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-443  (Poster presentation)

アマモ場におけるマイクロプラスチック量の変異 【B】
Variation in microplastics in an eelgrass bed of Akkeshi, Hokkaido 【B】

*伊藤柚里, 仲岡雅裕(北海道大学)
*Yuri ITO, Masahiro NAKAOKA(Hokkaido Univ.)

プラスチックが断片化しサイズが5㎜以下になった小片をマイクロプラスチック(MPs)と呼ぶ。MPsの摂食を通して生物体内に汚染物質が取り込まれ、代謝異常や摂食障害を引き起こす可能性が指摘されている。沿岸域に形成されるアマモ場は、多様な海洋生物の生息場所となっているが、近年、海洋に流出したMPsを捕捉し蓄積する効果 (MPs捕捉効果)があることが明らかになってきた。しかし、捕捉効果の大きさには地域差があり詳細は未解明である。本研究ではアマモ場のMPs捕捉効果を評価するため、(1) アマモ場内外の堆積物間、(2) 異なる地域のアマモ場間、(3) アマモ葉上部とアマモ場内堆積物の間でMPs量と形状(繊維、発泡スチロールなど)を比較した。瀬戸内海(広島)の1サイトと北海道東部太平洋沿岸(厚岸)の2サイトでアマモ葉上部とアマモ場内外の堆積物を採取し、MPsを抽出して個数と形状を記録した。アマモ場内外の堆積物におけるMPs量はいずれのサイトにおいてもアマモ場外よりアマモ場内で若干多かったことから、アマモ場がMPs捕捉効果を持つことが判明した。アマモ場内外でMPsの形状に差異はなかった。地域間の比較では、広島のMPs量が厚岸よりも約6倍多かった。海表面のMPs量は瀬戸内海の方が北海道東部太平洋沿岸より多いことから、周辺海域におけるMPs量の差異がアマモ場のMPs量のサイト間の差異に影響していると考えられる。広島では発泡スチロールの相対的割合が多く、養殖の漁具に由来すると思われる。アマモ葉上とアマモ場内堆積物のMPs量を底面積当たりで比較したところ有意差はなかった。葉上のMPsは繊維状のものが多かったが、基質への付着しやすさに関係していると思われる。葉上に付着したMPsは枯死した葉と共に堆積物中へ移行することにより、アマモ場内の堆積物におけるMPsの蓄積に貢献していると考えられる。


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