| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-446 (Poster presentation)
熱帯・亜熱帯沿岸域に生息しているサンゴ類は、体内に共生藻類(Symbiodiniaceae)を保持しており、サンゴの石灰化にも大きく寄与していることが知られている。共生藻類には複数の属が存在することが知られており、ストレス耐性や成長速度に影響することが報告されているが、サンゴ種内に見られる石灰化速度の変異との関係は未解明のままである。そこで本研究では、共生藻類の多様性が、サンゴの石灰化速度と関連している可能性を探るため、塊状サンゴ(Porites australiensis)と枝状サンゴ(Acropora digitifera)の石灰化速度の異なる群体間での共生藻の多様性を調査した。石灰化速度の異なる群体の共生藻の遺伝子型を解析した結果、両種の群体はいずれもCladocopium(従来はSymbiodiniumのクレードC)を主に保有していることが明らかになった。P. australiensisのCladocopiumは主にC15とC15bnからなり、A. digitiferaの共生藻類はC50aとC50cから構成されることが分かった。また、共生藻の組成と石灰化速度の間には、2種のサンゴで明確な関係は見られなかった。この結果は、サンゴの石灰化速度の違いは、サンゴの宿主の遺伝的要因や共生生物の遺伝子型に起因している可能性を示唆している。