| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-003  (Poster presentation)

ツキノワグマの生活史パラメータの推定
Estimation of life history parameters of the Asian black bear

*小池伸介(東京農工大学), 栃木香帆子(東京農工大学), 深澤圭太(国立環境研究所), 黒江美紗子(長野県環境保全研究所), 姉崎智子(群馬県立自然史博物館), 長沼知子(東京農工大学), 小坂井千夏(農研機構), 稲垣亜希乃(東京農工大学), 山崎晃司(東京農業大学)
*Sinsuke KOIKE(Tokyo Univ. Agr. and Tech.), Kahoko TOCHIGI(Tokyo Univ. Agr. and Tech.), Keita FUKASAWA(NIES), Misako KUROE(Nagano ECRI), Tomoko ANEZAKI(GMNH), Tomoko NAGANUMA(Tokyo Univ. Agr. and Tech.), Chinatsu KOZAKAI(NARO), Akino INAGAKI(Tokyo Univ. Agr. and Tech.), Koji YAMAZAKI(Tokyo Univ. Agr.)

 野生の哺乳類の個体数の変動(以下、個体群動態)を把握することは、生物学的知見の蓄積だけでなく、保全や管理においても重要な課題である。ツキノワグマ(以下、クマ)は日本に生息する森林性の大型哺乳類であり、直接観察が困難であるため、個体群動態を把握するために必要な繁殖に関する知見はほとんど明らかになっていない。そこで本研究では、群馬県で有害駆除されたツキノワグマから採取したサンプルをもとに、群馬県に生息するツキノワグマの繁殖パラメータを推定することを目的とし、以下の2つの調査を行った。①:2009~2019年にかけての有害捕獲個体(メス=54)から採取した第一小臼の年輪幅から繁殖成功履歴の推定を行い初育児成功年齢と育児成功間隔を求めた。さらに、②:2009~2019年にかけての有害捕獲個体(メス=25)の子宮から胎盤痕の数を集計し産子数を求めた。その結果、①:初育児成功年齢は平均5.64(標準偏差=1.13)歳、育児成功間隔は、平均2.25(標準偏差=2.17)年となった。②:産子数は平均1.96(標準偏差=0.45)頭という値となった。過去10年間に収集された有害捕獲個体のサンプルを解析することで、直接観察が難しく、寿命の長いツキノワグマの生涯における基本的な繁殖情報を明らかにすることができた。今後は、本研究により得られた繁殖パラメータを用いて、個体群の動態分析などへの応用について検討していく。


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