| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-005  (Poster presentation)

国内に生息するナナホシテントウの2つのCOIハプログループの分布
Distribution of two COI haplogroups of seven spotted ladybird beetle in Japan

田端帆奈美, *三宅崇(岐阜大学)
Honami TABATA, *Takashi MIYAKE(Gifu University)

生物では、遺伝的交流を行う個体の集まりが集団、ひいては種を形成する。そのため、遺伝的分化は遺伝的交流の指標とされる。つまり、分子系統樹は、遺伝的交流を行う個体の集まり、例えば種や亜種、種内の地域個体群によって系統がまとまることが多い。日本や中国などに生息するナナホシテントウCoccinella septempunctata bruckiは、斑紋の大きさなどからヨーロッパや中央アジアに生息するC. s. septempunctataと形態的に区別され、両者は亜種の関係にあると位置付けられている。しかし先行研究から、ミトコンドリアDNAのCOI領域の系統樹では、日本のナナホシテントウの複数集団で遺伝的に分化した2つの系統(クレードAとB)に属するハプロタイプがみられ、一方はC. s. septempunctataとともにその1つ(クレードAとする)を構成していることが知られている。そこで本研究では、日本の様々な集団(北海道から沖縄までの14県18地点)から採集した個体を用いて、2つの系統がどの程度普遍的に共存しているかを調べた。また、同時に核ITS2の配列を調べることで、2系統間の遺伝的隔離の有無も検証した。
その結果、今回調べた本州のほとんどの地域でCOIの2系統が存在することが分かった。またさらに、緯度が高くなるほどクレードAに属するハプロタイプ割合が高くなり、帯広(北海道)ではクレードAのみ、奥武島(沖縄県)ではクレードBのみがみられた。一方でITS2領域の解析では、複数個体を含むハプログループにおいて、一方のクレードに属する個体のみによって構成されることはなく、COIの2系統における生殖的隔離の証拠は得られなかった。また、ITS2領域ではインデルのズレにより途中から波形が読めなくなる個体が複数の個体でみられたが、その理由は不明である。


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