| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-010 (Poster presentation)
高度経済成長期から続く同時多発的な里山環境の喪失は、生物多様性の損失を招いている。高い生物多様性を内包する里山環境の残存状況をより正確に把握し、将来予測を行うには、生物の生息実態を組み込んだ評価が重要となる。本研究では、里山で越冬し、高い生物多様性の指標となりうるアンブレラ種ノスリの生息適地をMaxentを用いて推定し、九州にノスリの越冬できる環境がどの程度残存しているか、そしてそれは過去や未来と比べてどの程度の増減があるかを検討した。まず、2016年から2022年にかけて、福岡県・長崎県・宮崎県を中心に越冬期のノスリの調査を行い、観察地点を3次メッシュスケールで整理した。この在データを利用し、現在の土地利用や標高のばらつきを説明変数として組み込んだモデルを用いて解析を行った結果、九州における越冬期のノスリの生息適地は、森林に近い農耕地を中心に広がっていることが分かった。さらに、構築したモデルを1970年代の土地利用マップに外挿して比較したところ、現在にかけて九州のノスリの生息適地は減少傾向にあることが判明した。同様に、すでに公開されている2050年の土地利用を予測したマップに外挿して比較したところ、生息適地はさらに減少し局在化する可能性が示唆された。これらの結果から、ノスリが越冬できるような豊かな里山環境の減少は今後も続いていくものと思われる。